春風亭ぴっかり☆改メ 蝶花楼桃花(ちょうかろう ももか)インタビュー
縁あって春風亭ぴっかり☆には節目節目に何度も話を聞いてきた。最初は二ツ目になりたての頃。その後は、二ツ目での活動が活発化しその公演規模が大きくなるにつれてインタビューをしてきたが、そんな彼女もついに真打昇進を決めた。3月21日に晴れて真打となり、名を改めて蝶花楼桃花を名乗ることとなる。
晴れ晴れとした表情や、達観した感のある発言に真打昇進というものはここまで自信を与えるのかと驚いたが、歩みを緩めるどころか披露目から攻めるその姿勢に清々しささえ感じられた。
取材・文章:加藤孝朗(ハナシ・ドット・ジェーピー)
――真打昇進、「蝶花楼桃花」への改名が決定したということで、おめでとうございます。今の心境はいかがですか?
「蝶花楼」という大きな亭号を引き継ぐというのは考えてもみなかったことなので最初はすごい重圧を感じていますが、やっぱり嬉しいの一言ですね。「蝶花楼」というと蝶花楼馬楽という名前が記憶されていると思います。今まで男性しか継いでいなかった大きな亭号を自分が名乗るという違和感はありますが、純粋に落語好きな人間としては嬉しいです。
――二ツ目という噺家としてはとても大切な期間に長い期間を名乗ってきた「ぴっかり☆」という名前がポッとなくなってしまうという感覚はどのようなものなのでしょうか?
本当にたいへんなことだと思いますよ。10年間一生懸命やってきたものをいきなりかなぐり捨てて新しくなるというのはあまり他の芸能では考えられないことですからね。今までの実績を捨てるではないけれど、そういうことになる部分もあるので、それは制度的にすごいことだなと思うことはあります。でも「ぴっかり☆」を名乗った最初から確実に名前は変わると思っていたし、変えていただこうと思っていたので(笑)。
――そもそも、名前はどうやって決まるんですか?一択なんでしょうか?
一択でした。これはうちの師匠の小朝が考えてくれた名前なんですが、私も本当にぎりぎりまで教えてもらえませんでした。2020年のクリスマスの日に、いい名前考えついたというようなことを言われたんですがその場では教えてもらえませんでした(笑)。で、名前の案はいくつかあるんですか?って聞いたら、一択だと言われまして(笑)。で、やっと教えてもらったのが2021年の7月ですね。他の一門は師匠と相談しながらこんな名前がいいんじゃないかと決める方ももちろんいるんですが、私の場合は師匠が一人で決めてくださった名前ですね。
――名前を一択で受け入れるのはすごいことですね。
もうどんなものが来ても名乗ろうと腹に決めていました。いろいろびっくりするようなことを言ったり決めたりする師匠ではあるんですが、最終的に私にとってベストな選択をしてくれる、という絶対的な信頼がありますので。ただ、実はその前にうちの師匠は「ふらんす亭じょせふぃーぬ」って言ってまして、それ、ちょっと本気っぽかったんですよ (笑)。まあ、「ぴっかり☆」って名前を思いつくような人ですからありうるんじゃないかとちょっと覚悟をしてもいたりね。で、もう一つ言っていたのは、「高橋お伝」。私の本名が高橋なので、まさかの本名戻りか、と。でも最後は打ち首になっているので縁起が良くないねってことで、なくなりました。「高橋お伝」になってたかもしれないんですよ、私(笑)。
――以前お話をお伺いした時に、前座から二ツ目になるということはとにかくうれしくて、人生で一番じゃないかというぐらいうれしいと。真打になるよりもうれしいんじゃないか、と言われていましたが、今実際真打になるこのタイミングでどう感じていますか?
嬉しいです。すごく嬉しいんですが、二ツ目になる時の解放感とは違って、重圧を感じています。ここから師匠と同じ位に行くわけじゃないですか、最高位とされている真打というのは。そこで居並ぶ師匠方と同じ位になるという圧の方が強いですね。どうその中にいって、どう戦うのかという不安な気持ちの方が正直大きいですね。
――これもまた以前のインタビューで、真打というところにはとんでもない存在がいるところで、そこにはバケモノが存在していると言っていました。とんでもないバケモノがごろごろしているので、真打になるということはとても怖いことだと言われていました。その怖さというのはいまだにあるのでしょうか?それよりもやってやるぜという気持ちの方が強いのでしょうか?
いや怖いですよ。それは間違いなくあります。ただ、もう真打になると決めていただいたからには、そこでどう生きていくかと考えるしかないので、何が私にとっての武器なのか、私の良いところはどこで、それをどうやって出していくかということを二ツ目の時以上に考えていかないといけないなと。二ツ目は、「私、粗削りです」といってぶつかっていくことができましたが、それがきかなくなるという訳ですから、気が引き締まる、そういう感覚です。
――年功序列の世界なので、真打になるのはある程度年数で決まってくるじゃないですか。昇進の時期が少しずつ近づいてくるのは、プレッシャーになるものなのでしょうか?
はじめは、結構他人事なんですよ。で、一緒に前座をやった先輩たちが師匠と呼ばれるようになってからですね、「私もそっち行くの?」って感じが若干してくるのは。とは言えまだ上に20~30人いるよと思っていたら、ギュンと目の前に来ていた、という感じです。そういう速度感はありましたね。だから、気持ちが追い付いていないところは正直あるかもしれません。
お披露目のポスター作ってもらったり、人からお祝いを言ってもらってもやっぱりまだ「蝶花楼桃花」という感覚がないんですよね。だから、私、「蝶花楼になるんです」というところを間違って「桃月庵」と言ってしまったことがあるんですよ(笑)。なんか桃に引っ張られて、ね。それぐらい、馴染んでないんです。だから「私は蝶花楼桃花です」と自然と言えるようになった時に、少し、「私、真打になったのかも」と実感するのかもしれません。
――真打になると周りの見方も変わります。
そうそう。より厳しくなります。駆け出しの真打も、30年後の真打もお客様には関係ないことだし。そこは、もう、高座しかないんですよ。高座で私が出せるものしかない。結局は、「真打でこのレベルか」って思われたら、面白くなかったら見てもらえない訳じゃないですか。結局はその人を見てどう思うかなんですよ。だから、真打という位を重く受け止めてはいるんですが、それに頼る気持ちは持たないようにしています。
――見て判断してもらう、それが芸の世界、ということですね。真打昇進への準備は整っていますか?
いろいろな品物を作っていただいたり、いろいろなかたにご挨拶に伺ったりと、物理的な準備は本当に大変で、真打というものの重さをいやというほど味わっています。ただ芸の面で自分に言い聞かせているのは、私にとって真打になるってことは、あくまでも通過点でしかないということですね。だから、真打になるというのは大きなイベントですが、何かが、ここで終わるわけでもないし、カッコつけでもなんでもなくて、これはが通過点である以上、準備と言っても、今まで培ってきたものを出すとか、これまで以上に精進するとか、そういうことしかない。決して冷めているわけではなく、前向きな気持ちでそんなふうに考えています。
――今、どこを見られていますか?どういう目標をもって、どこに向かおうとしていますか?
隙間産業的かな(笑)。本当に、どう生き残るか、どんなカラーを出すかをいつも考えています。さきほどバケモノという言葉がでましたが、そんな言葉でしか表現できないほどのものすごい先輩たちとの戦いに入ることになるので、そのなかで、私の持つ強みは何かということ、そこをどう伝えていく落語会を開催していくかということをすごく考えています。名前を大きくしたいとか言えたらいいんですが、もうとにかく何とか生き残るために自分の色というものをひねり出そうとしている感じですよ(笑)。女性だというだけではもう、珍しくもなんともないし。
――テレビやラジオの経験も多いし、舞台や映画の経験もあるし、他の仲間と比べるといろんな経験も積まれています。それだけの経験があって、且つ女性であるという個性もある。他の人よりも語るべきものが多いですよね。それが自信につながっていますか?
そうですね。しんどい仕事とかもちろんあったんですけど、あれを乗り越えられたんだから、これも頑張れば大丈夫かなという感覚が持てたのは自分でも大きなことですね。例えば、「噺家が闇夜にコソコソ」っていうTV番組がありましたが、あれは二ツ目になってすぐに真打の中で新作落語を発表しなくてはいけない番組で、とても勉強になりました。ラジオのパーソナリティを初めてやらせてもらったときは、それまでラジオってあまり聞いたことがなかったんですよ。でも私なりにいろんな番組を聴いて工夫したり、スタッフさんにいろいろ教えていただいたり。今ではラジオ大好きっ子になりました。
――仕事の幅は、今後も積極的に広げていく予定ですか?
広げていきたいと思っています。
――何か明確なものとかありますか?
お芝居が大好きなので、演劇的要素を落語に入れたものをすごくやりたいと思っています。まずはしっかりと落語にぶつかっていくことが第一ではあるんですが。
――なるほど。いろいろな方が落語と何かをコラボレーションさせていますが、コラボレーションというと、ややもするととても実験的になりがちで、そうではないものが見たいですね。そこにぴっかり☆さんの持つポップさが入ってくると面白そうだと思います。
私も和太鼓やピアノと一緒にやったこともあります。それはすごく面白くて楽しい実験なんですが、なかなか定着しないんですよね。私は、落語の形を取ってはいるけれども、落語を聴いたおもしろさだけでなく、たとえば演劇を見た感動や、コンサートに行った興奮みたいな、そういったものもあわせて持って帰ってもらえるようなものをやってみたいと思っています。落語にお芝居や音楽なんかの要素を入れて、そこに自然にエンターテインメントとして楽しめるようなものを、ひとつでも私が作り上げられたら、めちゃめちゃ嬉しいと思うんですよ。私の好きなものを全部詰め込んだみたいなものを。もう、これはコラボレーションというものではなく、「私」ですよね(笑)。落語なのか、お芝居なのか音楽なのかはわからないけど、とても面白かったよね、っていうやつをやれたら幸せですね。
――エンターテインメントとして成立するものを目指すと。
そうそう。遊園地なんかも、なにが、どこが、ということではなく「わー、なんか楽しかった」というものじゃないですか?ああいう感じですよね。理屈じゃなくて楽しいことが一番(笑)。
――女性であるという意識はキャリアを積むごとに強くなっていますか?弱くなっていますか?
よく答えることなんですが、女性ということは私いう芸人の個性のひとつとしてとらえるようにしています。背が高いとか声が太いとかと同じような。そういう意味では女性であるという感覚は常に持っていて、これをどう出してこうかみたいなことは考えます。
――初めてインタビューでお話を伺ってから10年弱ぐらいたっているのですが、その間に世の中はものすごいスピードで変わっていて、もう既に「女流」という言葉を使うのが古いとういか、今ではもうふさわしくないという感覚があると思います。「女優」ではなく「俳優」だというように。そんな今、「女流」という言葉であったり、落語界において「女性」であるということをどう感じていますか?
まったく気にしていない、というのが正直なところですね。表面上の呼び方だけ変えても、内面の意識が変わらなければ最終的には意味がないじゃないですか。いろいろな意見を持つ方がいるとは思いますが、私に関しては、今現在の思いですが、どう呼んでいただいても構わないです。男性か女性かということではなく、私自身の落語を支持してくださるのかくださらないのか、楽しんでもらえるかそうでないかだけなので、性別による呼ばれかた、括られかたは、本当に気にしてはいないですね。
――楽しんでもらえるかそうでないかだけというのは、何か一つの高みに到達したという感じがします。
いえいえ (笑)。女であるということで私を見に来てくれる人もウエルカムだし、そこが嫌いだといってこない人もそれはその人の考えだから仕方のないことだと思っています。
――気にして、果敢にトライしてという時期もありましたよね。
もちろん、もちろん。
――それは自然に消えていったんですかね。
そうですね。結局は、私が面白いかどうか。この人の高座が見たいか、そうでないかだけなんですよね。そこに女である男であるは関係ないんだなと、そう思うようになりました。
――そういう流れの中で、「成金」がうまくいったということもありユニットという団体で見せていくという動きが非常に盛んになっています。そこで女性は女性で集まってプレゼンテーションしていくということも流れとして起きました。ただ、そこからやや距離を置いたように僕には見えたのですが、それはなぜでしょう?
そう見えていたら嬉しいですね。自分なりにいろいろと考えた結果として、真打を意識し始めた頃からはユニット的な活動から意識して距離を置くようにしてきました。今までは女性の噺家仲間たちにいろいろ助けてもらったり、女性落語家を一堂に集めてご覧いただくといった企画公演などもやってきたんですが、これから真打になって自主公演を打つ時にはそこからは卒業しようと思っています。固まって、力を合わせて勝負するという見せ方は二ツ目の時代にはとても必要なことだったし、私たちが少数であった時に有効であったと思うんです。でもこれからは、ユニットに限らず、ひとつひとつの活動について、意思を持って、やりたいことがあって、その活動に取り組みたいと思っています。それがたまたま女だったということはあるかもしれませんし、そういう企画をいただいて内容に賛同した場合とかに参加させていただくことはもちろんあると思いますが、自身の方向性としては、なによりも一人の噺家として見ていただける活動を二ツ目の時より色濃くしていきたいと思っています。
――群れない力ってあると思います。でも、それはとても難しいことですよね。
そうですね。内心は不安もいっぱいです。
――ぴっかり☆さんは女性の噺家さんのみでのツアーなどもいろいろと企画されていたので、シーンを盛上げる中心にいるように見えていました。そこにいた方が突然女流で集まることも、ユニットを組んでいくことも、大きな流れを否定するような動きに出たように見えてとても驚いたんです。
決して否定ではないんですよ。私の活動として、ここからは違った道を選ばせていただきたいということで。「輝美男五(きびだんご)」(注1)というユニットも、一定の評価と手応えをいただいたこともあって一区切りとさせていただきましたし、「落語ガールズ」(注2)というユニットにも実はお誘いをいただいていたんですが、今のこういった考えが芽生え始めてていたこともあって、ご辞退させていただきました。そういったものをいっさい否定しているわけではないですし、実際一人でいるのはおっしゃる通り怖いんですよ、一人でポシャってしまうこともありうるし。怖いんですが、「成金」が成功したのは結局個々の活動がきちんとしているからなんだとも思うんですね。あれは、集まったから人気が出たんじゃないんです。一人一人がとてもちゃんとやっている。それを見て、自分も、まずは自分を磨くところに重きをおいてみたいと、そう考えるに至った、というところなんです。実際、「ソーゾーシー」(注3)みたいに新作をやりますというような、やることが明確に決まっているユニットなど、魅力的に感じる企画や活動もたくさんあります。そういった魅力的な企画やご提案をこれからもいただけるよう、いただいたときに胸を張って参加させていただけるよう、まずは自分と向き合って芸を磨いていきたい。いまはそんな気持ちでいるんです。
(注1)「輝美男五(きびだんご)」・・・立川こはる、春風亭ぴっかり☆、一龍斎貞鏡(講談)、鏡味味千代、林家つる子の5人で、演芸のみならず歌、踊り、演劇など、さまざまなエンタテインメントに挑戦したユニット。
〈注2〉「落語ガールズ」・・・東京にある落語家の団体の枠を越え、2017年秋に結成された女性落語家のグループで川柳つくし、林家ぼたん、古今亭駒子、三遊亭美るく、林家扇、柳家花ごめ、林家あんこ、春風亭一花、春雨や風子、三遊亭遊かり、三遊亭遊七、立川こはる、立川だん子の13人が所属。
(注3)「ソーゾーシー」・・・瀧川鯉八、春風亭昇々、立川吉笑、玉川太福の4人によって2017年に結成された創作話芸ユニット。
――今までも活動の幅は広げてこられていましたが、この先もより幅を広げていかれるのでしょうか?小朝師匠のように、声さえかかればドラマにも出るような活躍を見たいですが。
もちろんです(笑)。そりゃ、出ますよ。落語って素晴らしい芸なんですが、やはり生の公演となると規模を大きくしづらいとかの弱点もあるじゃないですか。例えば何万人という規模での公演は現実的ではないし。映像や配信では伝えきれない空気感みたいなものもあるような気がするし。そう考えると落語って広めにくい芸だなとも思うんです。実際、このコロナ禍で配信とかいろいろなことを皆さん始めていて、またこれから先変わっていくであろう世の中に向けていろいろ新しいことを提示していたと思うんですが、私はお客様の目の前で演じたい、お客様と同じ空気を共有したいという気持ちが強くて、YouTubeも配信もこれまでやっていないんです。で、この先、コロナの終息が見えてきたとしても、もうこの世の中は今まで通りには戻らないかもしれないじゃないですか、その時には今までなかったものを積極的に提示していかないと、落語を取り巻く環境は発展しないと思っています。それが何かはわからないけれど。
今まであったものを落語にあてはめたものではなくて、落語の弱点と思われていた部分さえ魅力として見せていくためのなにかが見つかったらすごいなと思っています。全く見つけられてないけど (笑)。YouTubeでもない、配信でもない、音声でもない、何なんだろう、と、ずっと考えているんです。だから、私の活動としては、それを前のめりで探していきたいと思っています。そんな宙ぶらりんなことしか言えないのですが。そういうものを見つけに行く旅のスタートが、今回の真打昇進でもあると思っています。
――シーンがそうなっているのにかかわらず群れない、配信やらない、それは、落語界の流れに明らかに反しているというか、ここまでやらないと反旗を翻しているかのような気さえします。シーンとして業界としてそっちに何か勝機を見ているのだから、ちょっと協力して下さいという人は山ほどいると思うんですよ。
実際、魅力的なお話もたくさんいただきました。
――うちのサイトでも配信スケジュールをまとめていまして、一時期は1日に20件も30件もあるという状態になりました。その中にぴっかり☆さんの名前は出てこなかったのは、なんだこれは、という思いで見ていました。群れないし、今そこに向かおうとしていることにはのってこない。その意思だけは、すごく伝わってくる。
ある公演では居並ぶ師匠方をおいて、配信をお断りしたのは私だけ、ということもありましたよ。正直なところ、うわっと思いました (笑)。
――貫く意志の強さは、どこから来るのでしょう?これだと決めたら、断っていくことなどはあまり気にならないんでしょうか?
いやいや、気になりますよ。お断りする時も、どういえばわがままと取られないかを考えに考えて、心からお詫びしながら自分なりの考えを丁寧にご説明させていただきます。それでもわがままや生意気だと思われてしまうことがあったとしたら、それもまた自分の未熟な部分だと反省するようにしています。
配信についていえば、リアルタイムで流れてその時間を共有してくれるものであればまだいいのですが、アーカイブとかがとくに苦手なんですよ。私は、その日そのときのお客さんと、共犯関係を結びたいんですね。生でそこにいる人たちに共有してもらいたいんです。私のその日のコンディションから何から全部含めたものを。
――今は、ということですよね。その先その考えがどう変遷していくかはわからないと。
はい、それはそうですね。
――今の意志を貫く力がちゃんとあるんですよね。
めんどくさいやつだなと思われているんじゃないかと内心ビクビクです、根は小心者なので。
――意志の強さは、ひっくり返せばめんどくささですから(笑)。
自分でも思うんですよ、めんどくさいな私って(笑)。でもそこは自分のやりたいこと、やるべきと思うことを貫いていかなきゃ、って自分に言い聞かせています。最終的には高座にあがるときは一人なので。
――披露興行に向かっていきますが、ここで何をどう見せていただけるのでしょう?非常に気になるところです。
席に足を運んで、私と共犯関係を結んでくれた人にだけわかります (笑)。ただ二ツ目の集大成ということだけではなく、真打の第一歩となるものにはしたいと思っています。
――披露目でも戦う、と。
戦います!? (笑)。それは、真打がゴールではなくスタートなんだということも意識しつつ。
――寄席でトリをとるというのは噺家の方にとっては夢じゃないですか?それを前にすると高揚する気持ちというのはありますか?
それはもちろんそうですよ。「本当にここを目指してきたんだよ」という兄さん方の姿というのも見てきましたし。やっぱり落語家になって広く多くの人に楽しんでもらいたいと思ってがんばってきましたので。ただ、「私の夢はほかにもあるぞ!」という気持ちも実はあります。贅沢なんです、私 (笑)。
――寄席のトリがゴールじゃないと。
いやいや、大切なゴールのひとつですよ!だって、めちゃくちゃ名誉なことですよ、私なんかがトリなんて。しっかり精進してゴールを決めて、でもそれで満足せずにまた別のゴールもめざしたい。
――ずばり最終ゴールは?
「ちょ」と打ったら、まっさきに「蝶花楼桃花」と変換されるぐらいの(爆笑)。
――野心家ですよね。それをぱっと笑いながら言えるんですから。
冗談です (笑)。そりゃそんなふうになったらうれしいですけど。本当にメンタルが強いわけでも何もないんですが、でもそれぐらい大きなことを自分にだけは常に言い聞かせておかないと。めちゃめちゃ小心者だしね、気にしいだしね。マイナス思考だし、ひどいんですけど、私。
先程も言いましたが、私は隙間産業なんですよ。私に何ができるかというのを小さく小さく掘り下げていって、生き残りたいですし、それが何か盛り上げることに近づけられれば、貢献出来たらうれしい。とてもとても (落語界を) 引っ張っていくなんて言えないですから(笑)。
――披露興行があって、そこから先、見えている活動はありますか?
まず、寄席に続いてホールでのお披露目興行はお声をかけてさえいただければ積極的にやっていきたいと思っています。で、私が二ツ目でやっていた自主公演や企画公演はいったん卒業しまして、何か私のやりたいこと、取り組んでみたいことをはっきりとりいれた落語会を成功させるというのが近々の目標というか予定としてあります。まずは、意思をもった会を打っていき、そこにお越しいただいて、そこで力を発揮できるような芸人になっていきたいですね。
【公演詳細】
蝶花楼桃花 真打昇進披露興行
・鈴本演芸場 3月21日(月・祝)、26日(土)、29日(火) チケットぴあ
・新宿末廣亭 4月1日(金)、4月8日(金) チケットぴあ
・浅草演芸ホール 4月11日(月)、14日(木)、19日(火) チケットぴあ
・池袋演芸場 4月21日(木)、30日(土) チケットぴあ
・国立演芸場 5月11日(水)、13日(金)、14日(土) 詳細