落語用語辞典

あ 行

一門会
いちもんかい
師匠をトリとして、その弟子達が登場する会。キャリアの長い名人は多くの弟子を抱え、その弟子も既に人気実力ともに兼ね備えて活躍している一門も多く、その門下の主だった噺家さん達を見ることが出来るので、人気があります。
色もの
いろもの
寄席では奇術(マジック)、漫才、漫談、紙切り、大神楽、ものまね等の多くの落語以外の芸を見ることが出来ます。この落語以外の芸人の事を、色ものと言います。語源は、寄席の出演予定表に落語家は黒で、それ以外は赤で名前が書かれていることから、色ものと言われています。現在でも、寄席の出演者を示す札は、この分け方が使われています。色ものは、寄席の醍醐味の一つでもあります。
演目
えんもく
落語のネタのことで、演題や、単にネタとも呼ばれます。古典落語でも数百もの演目がありますが、各噺家さんには得意な演目があり、「この演目と言えば、この噺家さん」といわれるまでになるものもあります。

か 行

滑稽噺
こっけいばなし
落語の演目の中で、笑いを誘う噺のこと。愉快なものから、ばかばかしいものまで多くあります。落語と言えば、まずはこの滑稽噺を想像する人が多いと思います。
木戸
きど
寄席の入り口のことを木戸と呼びます。また、ここで払う入場料の事を木戸銭(きどせん)と呼びます。
高座
こうざ
落語が行われるステージ、舞台の事。基本的に座布団一枚あれば高座になりますが、演者の名前を書いためくりや、座布団の後ろに金屏風などもおかれることがあります。
古典落語
こてんらくご
落語は伝統芸能の中でも最も新しいものと言われています。大体、江戸時代後半から、明治、大正にかけて今の形になったと言われています。その為、現在ではこの時期に作られて、多くの噺家さんによって語り継がれてきた噺を古典落語と呼びます。古典落語というとどうしても江戸時代という固定概念があると思いますが、良く噺を聴いてみると、有名なものでも、お金の単位が「両」や「文」ではなく「円」であったりすることで明治時代の風情を語ったものや、車が出てくる話などもあり、一概に古典と言っても広い時代をさします。

さ 行

さげ 漫才などではオチと言われる、落語の最後のシメの台詞のこと(落語でも落ちと呼ぶ事もあります)。漫才などとの大きな違いは、このさげが笑いの頂点ではなく、話をまとめたり、帰着させたりする為の一言である為、ここで笑う事はほとんどありません。最初は、この最後の台詞で笑えない事で、その落語が分からなかったと感じる人が多いのですが、長い噺を分割して短くしたものなどは特にさげにあまり意味がない事もある為、あまり重要視しなくてもいいものです。
襲名
しゅうめい
昔から伝わってきた名人達が使ってきた名前(名跡)を継ぐ事。最近では、上方落語の大名跡である「文枝」を桂三枝さんが継ぎました。この襲名の際には、その一門や、多くの有名落語家が駆け付けて襲名披露興行という、特別なお披露目公演が行われ、途中に口上(こうじょう)という一門や協会の先輩などがずらりと並ぶ中で、襲名に際しての抱負を語るなど、一大イベントとなります。
定席
じょうせき
落語を毎日行っている会場の事。基本的には東京の鈴本演芸場(上野)、浅草演芸ホール(浅草)、池袋演芸場(池袋)末広亭(新宿)に、大阪の繁昌亭を含めた5カ所の事を指します。落語を行う場所としては、半蔵門国立演芸場などがありますが、ここは毎日公演を行っていない為、定席とは呼ばれません。
真打
しんうち
落語家の階級での最も上のクラス。真打ちになると「師匠」と呼ばれ、弟子が取れます。長く苦しい2つ目の間に付けた実力を、各寄席の席亭が認め、協会に推挙して真打ち昇格となることが多いです。その際に行われる披露興行は、落語家としての夢であり、これでやっと一人前になったとも言えます。
新作落語
しんさくらくご
古典落語が江戸後期から明治・大正時代にかけての噺なので、それ以降のものは全て新作落語と言えるのですが、大まかには、現代の出来事を題材にした噺を、新作落語と呼びます。最近では、春風亭昇太や、SWA(創造話芸アソシエーション)というグループで活躍した柳家喬太郎など、新作を得意とする噺家も多く、今の落語界を支えています。その筆頭は、上方落語の桂分枝(桂三枝)で、創作落語という呼び名で現代の舞台に多くの名作を生みだしています。
前座
ぜんざ
東京の落語家の階級は前座、二つ目、真打ちの3つに分かれていて、その最初の階級が前座です。期間は大体3~5年で、基本的に365日休みなしで師匠の家に通い、寄席では、着替えの手伝い等の雑務をこなしながら修行をします。

た 行

独演会
どくえんかい
寄席のように多くの噺家さんが登場するのではなく、特定の噺家さんが一人で出演する会の事をいいます。独演会と言っても、最初の一席は前座さんや二つ目の噺家さんが登場する事が多くあります。通常は、一気に2時間等の長時間を話すのではなく、何席かに分けて、2~3つの演目を聴くことが出来ます。
出囃子
でばやし
各噺家さんそれぞれが持つ、登場する際に三味線で演奏される、その人のいわゆるテーマソング。伝統的なお囃子の曲のみならず、最近は、海外の曲を出囃子にしている噺家さんもいます。ここにも、その人の個性が表れているので、注目して見ると面白い発見があります。

な 行

仲入り
なかいり
寄席や、ホールでの落語会の途中に入る休憩のこと。大体15分から20分の休憩が入ります。寄席は、この仲入りの後により著名な噺家が登場する事になるなど、単なる休憩だけではなく、その日の興行の重要人物がこの仲入り直前や、その後に出たりと、興行の流れを決める重要な要素にもなっています。この間に軽食(特に、助六寿司)を取る人も、大勢います。
人情噺
にんじょうばなし
落語の演目で滑稽噺と違い、人生の機微、苦労、悲劇を描く噺のこと。ハッピーエンドのものから、救いのないものまで様々で、涙を誘うものも多くあります。師走の代表作である「芝浜」など、今も変わらぬ人間味を描いたものが多く、「落語=笑い」だけではない深みを与えてくれます。

は 行

二つ目
ふたつめ
落語家の階級で、前座修行が終わった次の階級の呼び名。この二つ目は上方落語にはない、東京の落語界独特のものです。二つ目になってやっと、羽織や袴をつけられます。一通り芸が身についた上でなる階級の為、雑務からは解放されますが、寄席はもちろんのこと、出演する場を自ら増やしていき研鑽をして行かなくてはなりません。期間も長く、真打ちになるまでに大体10年前後の時間がかかります。
ホール落語 寄席ではなく、音楽やお芝居をやるような通常のホールで行われる落語会のことを言います。寄席と違い、出演者が少ない為、じっくりと落語を聴くことが出来ます。特に長い噺などは、ホール落語でしか聴けない為、事前に演目を発表している会も多くあります。

ま 行

まくら 落語の演目に入る前の導入部分の話を、まくらと呼びます。噺家さんが高座に座って、挨拶から始め、基本的にはその日の演目の内容に沿った事を話すことが多いのですが、時事ネタや、最近あった面白い話などを話す事も多く、このまくらで噺家さんの個性に触れることが出来ます。現落語協会会長の柳家小三冶はまくらが非常に面白く、且つ長い事で有名で、まくらだけで持ち時間を終わらせてしまう事もあり、その名も「まくら」という本も出版され、話題になりました。
名跡
みょうせき
落語家は、他の伝統芸能の様に、昔の名人の名前を継いで、何代目何某と名乗ることが多くあります。林家正蔵、柳家小さん等、現在いる噺家さんの多くは昔からある名前を継いでいます。その代々継がれてきた名前を名跡と言います。その中でも、多くの名人が継いできた名前を大名跡(だいみょうせき)と言います。
めくり 高座の上においてある、噺家さんの名前が書かれた紙のことです。この名前は寄席文字という独特の文字が用いられており、橘流という寄席文字の流派の一門があります。噺家さんが登場する前に次の演者の名前の「めくり」にめくるのは、前座さんの仕事です。

や 行

寄席
よせ
基本的に365日、毎日落語をやっている会場の事で、定席(じょうせき)と呼ばれている場所。東京には鈴本演芸場(上野)、浅草演芸ホール(浅草)、池袋演芸場(池袋)末広亭(新宿)の4カ所があります。昔は東京には多数の寄席があったのですが、現在はこの4カ所です。大阪には戦後長らく寄席がありませんでしたが、近年、天満天神繁昌亭が完成し、上方落語唯一の定席として親しまれています。寄席では落語だけではなく、奇術や漫談などの色もの芸人さんも多く登場します。