【女性芸人座談会】立川こはる、春風亭ぴっかり☆、林家つる子、一龍斎貞鏡


――今、落語ブームと言われ始め、メディアでもいろいろ取り上げられることが増えてきています。今の落語ブームを、みなさんどう思ってますか。特に、今言われている落語ブームの中には、イケメン噺家みたいなくくりがあるじゃないですか、それに対して女性の皆さんはいったい何を思うかっていうのをおうかがいしたかったんです。

こはる:それって何十年も昔からあるじゃないですか。例えば、小朝師匠は若い頃女性の追っかけが多かったとか、うちの師匠と志らく師匠が二つ目だった時は、9割女性客だったとか、いつの時代でも落語の歴史の中に“追っかけ”っていう、イケメン落語とかスター性、男性アイドル化っていうのは、何度もあったと思うので、“今だから”っていうのはないですかね。たまたま、今、その時期に自分たちもいるっていう気がしますけど。

――注目されることは、喜ばしいことではありますよね。

こはる:そうですね。取り上げ方がはたして?、っていうのはありますけど。

つる子:とっかかりは必要かなって。そこで興味を持って、寄席に行って、師匠方の芸をみて、さらに凄い!と盛り上がってくれれば…。

こはる:“呼び屋”と“聞かせ屋”だっけ。三平師匠と志ん朝師匠で、初心者をもっと入れていくっていう、そのきっかけ側の人間がいてくれないと。

つる子:多分、きっかけ側の方ってあんまりいないような気がする。世界も違いますし、メディアに強いってなかなか…。

こはる:逆に言うと、メディア側が落語家ってつまんないと思って、今まで使っていなかったのが、こういうイケメンでもなんでもきっかけにして、こんなに落語家って面白いんだって使ってもらえるようになれるっていうのが、第一段階なのかなって。使う側の人にどう思ってもらうかっていう、営業努力をする芸人が出てきたのがいいんじゃないかな。

つる子:イケメンブームは、ちょっと悔しいですよ。逆に、女流の方がイケメンじゃないかなって思う時がある。

こはる:(笑)キターー!!

つる子:むしろ我々の方がイケメンになれますよって(笑) 宝塚じゃないですけど、それでイケメンブームにあやかれないかなと。

――こうやって何かをきっかけに集まった女性たちで、もっと積極的にしかけていく必要があるんじゃないかと思ったりもします。例えば、“成金”の人たちも盛り上がってる。じゃぁ、それに対抗して、ユニットじゃないですけど、何かしらの動きを積極的に起こしていく必要性を感じませんか?

こはる:確かに、女流って、二人とか三人はあっても、五人以上で集まるってことは無いですよね。

貞鏡:喧嘩になるイメージありますもんね。

こはる:リアルー

(全員爆笑)

ぴっかり☆:怖い怖い。

こはる:確かに、10人くらいユニットで、どっかで広告会社に頼んで出してもらったら、それだけで関係ない人が、ワッてくると思いますよね。ただ、その発起人やる人が見当たらないっていうのが実際のところですけど。

ぴっかり☆:(こはるさんに)やってください。

つる子:お願いします!!。

貞鏡:真面目な話、わっと食いついてくれても二回目以降も継続的に面白いものを提供できないと、それっきりで終わっちゃうんですよね。次に繋げていくだけの手腕があるか、アイデアがあるか、技術があるかと問われると、そこで二の足を踏んでしまう。

こはる:例えばこの辺の世代の女流が10人集まったら、もっとバラエティに富んできかせられると思うんですよ。“みんな男”より、“みんな女”の方が、すごい芸の幅が広いと思うんで。

――確かに幅は広いですね。落語をあまり知らない人からしたら、「女流落語家っているんだ?」っていうくらいのレベルだと思うんですよ。講談でもそうだと思うんですけど。それに対して、人数が集まってうってでるだけで、相当インパクトがあると思います。それが10人なのか何人か分からないですけど、それくらいやってやるぜ感がね。実際できるかどうかはおいて。

こはる:“成金”はゲストに歌丸師匠呼んだり、小遊三師匠呼んだりしてるし、そういう方法もあるよね。

つる子:“成金” も、最初からではなく、徐々に人気が出たと聞いてます。

こはる:世にうってでるにしても、多分、今人が多すぎるっていうところで、みんな自分の道で行こうっていう風になりかけてる気がするんですよ。

つる子:でも、“成金”見てると、やっぱり団体の力って強いなって思いますよね。

こはる:これだけのことをひとりでできりゃぁなって思うんですけど。

――男前な発言で(笑)

(全員笑)

こはる:それは多分、立川流の第一義が、「独演会で売れること」っていうのが絶対条件であるからだと思います。ひとりで300人入れればいいじゃないって。

つる子:確かにそうですけどね、最終的には一人の商売ですもんね…。

――ただ、ああいう“成金”の動きとか、イケメンだっていうことがメディアを通して伝わってくると、それに対して、それだけじゃないだろって気にもなりますよね。

こはる:でも、男性社会への遠慮っていうのをずっと踏んできてるっていうのがあるので、そこをどうにかとっぱらえないかなと。

――その遠慮ってすごく大きいもの?

こはる:そうですね。私はきっと、落語の歴史、男性が続けてきた歴史に対する尊敬が念が強い。あとは落語が好きだから、徒弟制度は壊したくないっていう。よくあるじゃないですか、会社で女性が何人か入ったら、組織が崩壊するっていう話をよく聞くんですけど、あぁいったことはしたくないですし。落語が好きなんでおじゃまさせてもらってるっていう気持ちが、入っちゃうんですよねぇ。

――女性だからこそ、はじめて成し得るってことを…。

こはる:見つかってりゃ、もうちょっとやってますよ(笑)。

――見つからないっていうのが、現実的な問題であるんですかね。皆さんそうですか。

ぴっかり☆:女性だからということをすると、落語ファンが、講談もそうでしょうけど、結構お客さん側がすごく拒否する場合があるんですよね。東京の落語会を聴きに来る人は5000人くらいしかいないと言われています。その5000人を越えたところに、多分、落語を聴く可能性のある、演芸を聴く可能性のある人がいっぱいいるんですけど、そこを越えるのが、まず難しい。それに加えて、我々若手ってすごく近くにお客さんがいてくださる。まずその人たちを大切にしていきたいとも思いますし。

こはる:お客さんたちの中で、落語とはこうあるものだみたいなイメージがあって、女流というのは“そうではない”という前提で、舞台の上にあがらされていることが多い。落語好きな方たちの前でとなると、例えば、声が低いとか、男性を演じて違和感がないとかっていうので、初めて、女流でも落語やる奴いるじゃんって、その人のイメージの落語を、ある意味頭の中で革新させて、みていいんだっていうのはあるんですけど。私が一回、去年、ぴっかり☆さんの会で、カツラかぶって化粧して女の子の恰好であがって、普通に低い声で『金明竹』をやったんです。そうしたら、お客さんが、やっぱり違う、普通に落語やって欲しいと、けっこうな数のご意見をいただきまして……。逆に言うと、最近増えてきた、はじめて落語みるようなお客さんからすると、なんでそんな無理に男の子っぽい恰好してるのとか、そこの差もありますし……。

つる子:難しいですねぇ…。

こはる:でも、大丈夫ですよ、今の落語ファンはあと10年くらいでいれかわるから。

(全員爆笑)

――問題発言ですが、10年先も見据えないといけない。

こはる:そう。すごく今、過渡期なんじゃないですか。だから、今の前座やってるような女の子たちが、今の二ツ目みたいに動き始めた時には全然時代と言うか環境も変わっているだろうし、それこそモーニング娘。みたいな、AKBみたいな、女の子のユニットが出てくる可能性もありますよね。それをお客さんが受け入れてくれるような時代になっているかもしれない。

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