【鑑賞レポート】2015/4/27 「ぎやまん寄席 湯島編 入船亭扇辰・古今亭菊之丞二人会」


入船亭扇辰/古今亭菊之丞二人会@湯島天神参集殿へ

4月下席(下旬)で気になってたのは鈴本の「寄席紙切り百年『三代正楽展』開催記念公演」
4月22日~27日松坂屋上野店での『寄席紙切り百年 正楽三代展』に連動した企画。
週末に起き掛けでボンヤリしてたらツレが、
“あんた、髪切りに行くの?”
“え?行かねぇよ…後ろまだ染めなくても大丈夫だろ?”
“違うわよ!鈴本!どうしようかなって言ってたじゃない!!”
全然関係ないが、そんな鈴本演芸場を横目に広小路から湯島へ。

これも中々ありそうでない二人会。
ケレン味のない“ウワッ、シャキッとしてんねぇ”とストレートに思うには悪戯心と後で気付かされる仕掛け満載。
やり過ぎると昔のスティーヴ・マーティンとマイケル・ケインの映画「だまされてリビエラ」みたいになるがその寸前ぐらいなとこ。
いつもの湯島の会にしては少な目の100人弱ぐらい。
実はこういう時の扇辰師匠はちょいちょい(気合い)張り気味で来ますから油断なりません。

演目は
林家なな子「子ほめ」
入船亭扇辰「団子坂奇談」
古今亭菊之丞「片棒」
仲入り
古今亭菊之丞「のびる」
入船亭扇辰「夢の酒」

なな子は5月の下席から二つ目昇進。
「子ほめ」も喋り急ぎ過ぎない。
どうしても嬉しさ勝って大束になりそうなところを自制するかのように、丁寧にやってます。
(前座から二つ目へ)昇進が決まったあたりで、こうして前座で上がって落語聴いた感じで“もっと聴いていきたいなぁ”とかそうでないとか、わりとそんなとこあります。

扇辰さんは上がって6/1~行く欧州公演のこと。
その為に“今日は色々と売り物がございます”といって宿泊費を稼ぐために手拭いをロビーで販売してると。
ちょっと会場が蒸し暑いと見たか“クーラー、入れましょうか?”
あれ湯島の会場のクーラーって旧式で音うるさいのになぁ、そんなこと扇辰さんも知ってるだろうに…からの「団子坂奇談」
出だしきれいな話だなぁ思って聞いてると中盤からスリラー→ホラー展開へいく。
サスペンスが沸点ギリギリまでいって、サゲはストンッとわりとスカイフォールのように落とす。
「藁人形」とかもそうですが、これが結構癖になります。
サゲのあとに冷静になって考えると“え!?そんなん??”と毎度思うが、その頃はもう深々お辞儀して降りちゃってる。
ホントにわざわざクーラーまで掛けさせて、部屋の温度まで下げさせて…

菊之丞師匠は、仲入りはさんで二席。
客入りがそんなに多くないですが、しっかり菊之丞ファンが来ている。
一席目は、楽屋話、前座の粗相をマクラに。
仮名だが誰だかわかっちゃう風で“何もこの話しをしたからじゃないですが、寄席ではお客様を取り込む三棒(さんぼう)がありまして…”からの「片棒」
次男の銀の賑やかなのが似合うこと。

二席目は珍しいところで「のびる」
さすがにこれは初見。
なんでも放送・演芸作家の神津友好氏が40年ぐらい前に書いた作だそうで、初演したのは、小三治師匠らしい。
マクラで刀の使いようからくる言葉(抜き差しならない/切羽詰まる/元の鞘に収まる/反りが合わない/鎬を削る等々)を並べてから、美女とすれ違ったりすると刀身が二寸ほど“のびる”刀の噺。
なんか変な噺だなぁと思いつつ、理由とか背景は飛ばして、筋に委ねて少しだけクスッとなればいい。
湯島はわりと聴く方も手練れだから、ちょいとその辺をくすぐるように。
お洒落過ぎる演目。

トリは扇辰さん。
マクラでは“定番”菊之丞師匠の結婚/夫婦生活いじり。
実はご近所らしいのだが、一度も見たことがないと。
弟子の小辰がばったり会ったらしく…そこから“ご夫婦も色々ございまして”からの「夢の酒」
これも特別に派手な噺でないが佳品。
これは声音/仕草(所作)/表情を若旦那/奥さん/大旦那と3キャラ使い分ける態を楽しむ。
そんなにキャラで押してこない扇辰さんですが、噺によってそこを濃い目に来る時がある。
中でも「夢の酒」は特にそうか。

扇辰さんだけじゃなく、菊之丞師匠も声と表情そして所作で、落語の“落語らしい“楽しみを提供してくれる。
笑う量というよりも、笑い方とその残像/余韻とか、そういうことを知らしてくれる。
四席聴いても、決してもたれない。
そして終わってみれば、会として綺麗な“起承転結”
ちょうど暖かくなってきて東京がフワッと持ち上がったようなこの時期で猶更…いい塩梅に心のデトックスになる。

TEXT:凡梅@STREET-WISE