初めての落語2 ~「寄席」に行ってみよう~


寄席ってどんなところ?

まずは、「寄席って何?」という疑問が浮かぶと思います。
言葉は知っていても、詳しくは知らない人がほとんどでしょう。
誤解を恐れずに言うと、寄席とは、ほぼ毎日、昼から夜まで落語をやっている場所です。ここを定席(じょうせき)と言います。
東京には、上野の鈴本演芸場、浅草演芸ホール、新宿末広亭、池袋演芸場の4カ所です。
そして、大阪には天満天神繁昌亭があり、日本には合計5カ所あります。
それぞれ、これぞ寄席!という趣のある建物で、独特の雰囲気があり、気分は高まります。
全ての寄席はホームページを持っていて、それぞれ工夫がなされており、その日のスケジュールから、先のスケジュールまで見ることが出来るので、覗いてみる事をお勧めします。

基本的に寄席では、昼席と夜席という2回の公演があり、一回の公演には10人くらいの噺家さんが出演します。それぞれ持ち時間は短め(15分~30分)です。寄席には落語だけでなく、色物(いろもの)と呼ばれる漫才、漫談、奇術、紙切り、大神楽等の様々なジャンルの芸も一緒に観る事が出来ます。落語の後に漫才があり、また落語があり、今度は奇術がありと、そんな感じで約3時間程の公演が行われます。

寄席のシステム

寄席は、まず、基本的に当日券のみで、自由席です。値段は場所によって違いますが、大体2500~3000円くらいです。寄席の入り口のことを木戸(きど)と呼びまして、そこには、「木戸銭(きどせん)2,500円」というように書かれています。木戸銭とは、入場料の事です。
先にも書いたとおり、昼席と夜席の2回公演を行っており、平日は入れ替えがない場合も多く、丸一日落語を見続ける事も出来ます(私は、昔、よく仕事をさぼって入り浸ったものです)。

寄席にはもちろん有名な噺家さんも出演しますが、まだまだ入門したての前座さんや、二つ目と言われるその次のクラスの人達も多く出演するので、簡単に言うと、どんどん出番が進むにつれて質の高い、キャリアを重ねた噺家さんが登場します。一度に多くの噺家さんを観る事が出来るかわりに、まだ一流とは言い切れない修行中の噺家さんも観る事になります。

寄席の長所と短所、そして醍醐味

寄席は、前座さんから、二つ目、真打という全ての立場の噺家さんの落語を聴くことが出来ますが、実は、ここが寄席の良い所でもあり、難しい所でもあります。
それが理由で、初めて落語を観る人が寄席に行く事は、ちょっとハードルが高いと私は思っています。

初めての人が観る落語は、出来る限り質の高いものを体験して、その世界の素晴らしさに触れて欲しいと思っています。しかし寄席では、キャリアの短い人達から出演します。それも、こう言ってはなんですが、結構な人数が出演した後で、やっと主役級が登場します。
寄席は、楽しい場所です。
でも、初めての方には、お勧めしにくいのが正直なところです。

ただ、寄席には落語以外の色物の方も多く出演し、様々な種類の芸が堪能できる、エンターテイメントの宝庫です。そして何より、寄席は、寄席でしか味わえない独特の雰囲気という唯一無二の魅力があります。拙いながらも創意工夫を凝らした前座さんや二つ目の噺家さんの落語を聴き、早めに目をつけておいて贔屓にし、その人が真打になるのを応援するのも、落語の醍醐味の一つでもあります。

ジャニーズのファンの方が、その熱が高じて最終的には、バックで踊るジャニーズジュニアを追いかけ始めるように。
音楽ファンが、大きな会場でのメジャーなバンドに飽き足らずに、ライブハウスでまだ見ぬ才能を探し始めるように。
寄席というのは、落語の熱が高まれば高まるほど、楽しい場所になります。
まずは、ホール落語で落語に触れ、より深い世界を覗きに、寄席へ足を運びましょう。
寄席のしきたりはやや複雑なので、それは別の機会にじっくりと紹介します。