第99回ぎやまん寄席/春風亭一之輔独演会@湯島天神参集殿
湯島の落語会、ぎやまん寄席がじきに100回。
まだそんなもんか!?
と思いつつ、そんだけ世話になってる。
二人会の楽しみ方、面白さはここと北沢落語会に勉強させてもらったようなもん。
湯島は今年に入って独演会が多くなったが、それでも落語(主に古典落語)の情緒や雰囲気を場所と環境からも楽しませてくれる。
この日は一之輔の独演会。
200強のド満タン。
天井高、前後左右を含めて密度、濃度の濃いLive感に。
同じ200席でも人形町社教なんかはオーディオ的に、また落語のLive感が臨体験しやすい。
湯島の200席は、うねりのような熱量を醸し出す。
これだけ呼べる(勿論他のキャパのホールでも今は最もチケットの取り難いが)集客力、それに臨もうとする客の貪欲さ…この日もなんか旧東欧の国の地下政治集会のような感じ。
この日も一之輔にはTVクルーが張り付き。
今週末のTBS「サンデージャポン」らしい。
演目は、
春風亭きいち「真田小僧」
春風亭一之輔「長短」「錦の袈裟」
仲入り
春風亭一之輔「へっつい幽霊」
客の聴こうという集中力が、それなり会場の雰囲気を嵩上げしたが、それに容易にサーフライドしないで“どうどう”と手綱を寄せて、一之輔が自分の時間にした感じ。
開口一番はきいちくん。
一之輔の弟子。
一昨年ぐらいからか?
こいつもうっかり寝てらんない前座の一人。
一之輔は上がって
客が多いと初端からは煽らない。まずは謙譲気味に客のテンションを一旦抑える。
その上で、おもむろに…この日のマクラは、まず
家族で野球観戦(巨人VS阪神@東京ドーム)→更にちびっこ相撲のコーチをしている話し
そこから
“同級生がフランスの大統領になりまして…”からマクロン新大統領の年上の奥さんいじり
いつもながら内容のディティールも肉付よく可笑しく盛り上げてからの「長短」
いつもこの「長短」、長さんのリズムが市馬さんの「長短」に被る気がする。
途中、ハプニングで客電が一瞬消えかけるが、そこも上手く使って。
まるで指揮者のように落語の噺で、客をコントロールする。
さすがの空間構成力。
そのまま二席目
“何演ろうかなっ?考えて来い!ってことですよね…”
客電が消えたハプニングを思い出して、
“寄席で、さっきの「真田小僧」で途中ずうっと”あれ按摩よ!“って、結構な声で言ってるオバサンがいたことがありまして…”
“あんまりずうっと言ってて、他の客も半笑気味だったんで最後、”あまえが按摩呼んだだろ!“”呼んでないわいよ!!“って言わせまして…”
“この後、あの夫婦はどういう修羅場に”
イカシテル繋ぎ。
それこそハプニングからですが落語外伝へ。
結局「錦の袈裟」
これだと白酒の与太郎が好きだが、他の噺の与太郎に比べても、この噺だと女将さん持ちだし、確信犯ではないけど単なるバカじゃない。
でも確信犯じゃないけど、エスカレートした愛嬌がある。
一之輔のは、普通の与太郎が少し成長した感じ。
知的な感じも少し。
でも落語で描かれる女郎屋の翌朝って、なんでか妙に楽しく掻きたてられる。
仲入り後、トリネタは「へっつい幽霊」
ちょっと“へぇ~”というとこ。多分一之輔では初めて。
マクラは落語家の博打模様
噺の前半途中でお約束で“へっつい”の説明を、その際前の座布団席に座っていた子供(小学生)に向かって
“よし、君に向けて説明しよう!へっついは、かまど…かまどってわかる?”
まだまだこれから一之輔ヴァージョンへのマイナーチェンジがあるだろう。
最後の博打の場面なんかの可笑しさなんか、もっと増幅するでしょう。
三席。顧客満足度は高い会。
ただ200席の客のコントロールに、むしろカロリーを掛けたように思う。
この辺が湯島の200席。
他のホールだと、もうちょい落語がしっかり媒介になるとは思う。
まあまあとは言え、“これが落語だね”ってんで湯島の街に消える…何の問題も無い。