“さつまもん~立ったり座ったりの夕べ”林家彦いち/桃月庵白酒/松元ヒロ@成城ホールへ
寄席や落語会に行く理由はなんだ?
と問われれば、そりゃ色んなわけを挙げ連ねることは出来る。
ただ根底にあるのは、何を喋ってもいい、何を感じてもいい、という「自由」だろうね。
最近鋳型を作って、その中でわかる奴はわかる奴だけで楽しむ風潮が、落語会をやる側/出る側/楽しむ側にもはびこりだしてたし、
あるいは観る側が、これはこれを楽しむと限定した雰囲気を作り過ぎてたりってのもあるように思ったが、
お席亭(主催)がそう感じたかどうか、それに抵抗するような組み合わせ、実験的な試み?
「いて座の会」(市馬/正蔵/立川生志)とかもありますが、今回は鹿児島県出身者を集めての会。
スタンダップコメディアンの松元ヒロさんは鹿児島市の出身。鹿児島実業卒。
白酒は、大隅半島の根占町で少年時代を過ごし、高校は進学校の鹿児島市内の鶴丸高校出身。
彦いちは、親の転勤で県内をあちこち…大口市や、松山町(綾小路きみまろの出身地)から、自身の落語のネタにもなった離島の長島で少年時代を過ごし、高校は加世田高校(加世田市)出身。
熊本地震の募金を呼び掛けつつ、
“鹿児島も揺れてるけどね。NHKで震度でないね?”
演目は、
ご挨拶(三人揃って)
林家彦いち「長島の満月」
桃月庵白酒「お見立て」
仲入り
松元ヒロ/スタンダップ・コメディ
ご挨拶(三人揃って)
まずはこの会の趣旨説明も含めてのご挨拶。
それぞれのなぜか本名の説明から、出身地をボードの鹿児島県地図を使っての説明。
市内(鹿児島市)出身者と県内地方出身者の微妙な空気感、地元民しかわからない方言説明等々。
彦いちの仕切り。
なんとなくヒロさんを立てる。
白酒は様子見しつつ、自分のジャンルだと思うと強め/スマートに被せる。
会場は60-70%ほど、200強ぐらいの入りかなぁ…鹿児島県出身者は5名程度。
他府県の人には全くわからず、鹿児島県出身者は100%わかる「チャワンムシの歌」を歌う。
10分予定が30分に。
彦いちは鉄板ネタ「長島の満月」
自身が国士舘大学に入り、上京した際の合コン風景に被せて、故郷・長島での生活模様を爆笑に換えて。
この日も外しません。
やはり初めて島に信号が出来た日/東京土産の石鹸を和菓子と勘違い/水泳大会
この辺が文句なく。
ただ最後までサゲずに下りる。
白酒は、同じ鹿児島県出身では三遊亭歌之介さんの話しを
“楽屋で二人だけになると方言で話しかけてくる…”
“そういうの嫌だから上京したのに…”くらいのとこから落語は江戸のもん。
江戸後期から明治になる中で薩長の連中が東京に出てきた際の方言をからかうネタが多いと。
ここで「棒鱈」なんかにほぼ90%ぐらい行きそうな感じから「お見立て」
まあ「お見立て」の杢兵衛大尽の方言も大概だが…この日は30%増し盛り具合で。
普段なら喜助や喜瀬川花魁も残るが、杢兵衛大尽の荒っぽさしか残らない。
最後の墓場の場面、先週も談志さんの真似なんかも入れたが、ここでも談志さんの戒名を容れて。
まあ派手に、というとこで。
トリは落語会では珍しく色物さん。
とは言えここは保守風土のさつまもん。というわけでか年功序列か、ヒロさんで。
この人は観れる機会が少ないが、“談志さんお気に入り”で知られてる。
元々は“ザ・ニュースペーパー”なんかの初期メンバーで、更にその前はパントマイム。
そう言えばニューオータニでやった立川談志お別れ会でもステージに立ってましたね。
とかなんとかいうが、この人の凄いのは徹底的に“スーパーレフトトーク”
バリバリ護憲派で安倍政権批判、集団的自衛権反対etcを殴り捨てるようなトーク(漫談)で笑わかす。
まあ言いようだが、和製レニー・ブルース。
この日はヒロさんの客もいたが、成城の客は最初は面食らったようだった。
徐々に慣れて、それを面白がるように。
ちょうど麻生太郎の真似あたりから客席もエンジン掛かった感じ。
“貧乏人の皆さん、私の真似は簡単です。右の唇の端を少し上げればできます”
“私の口は右肩上がり、ですが皆さんから見ると右肩下がり”
鉄板ネタは、今年の正月の安倍政権への抗議デモでもやったやつ
“不良グループに刃物を持たせて、それが抑止力になるというのが、安倍さんの考え方。
そうしたら、不良グループはチェーンやピストルを持ってくるようになる。
僕は不良に『好き好き好き!』と近づいていって、3年間1度も殴られなかった。
憲法9条を体で示していた。
だから武器を持たない方が安心。
積極的平和主義というけど、安倍さんのやっていることは、あべこべなんです”
自身の鹿実の高校時代のエピソードに被せて。
持ち時間が長かったので、沖縄・辺野古へ行った時のネタも混ぜて大サービス。
“わじわじする”を連発。
(“わじわじする”と聴くと、Udou&Platyのこっちを思い出す→ https://youtu.be/Ekw0I0EX4e0)
ヒロさんは、鹿実では陸上選手(中長距離/駅伝)、そこから特待生で法政大学へ。
当時2学年上に今の翁長沖縄県知事(ただ2つダブって同学年になったのかな…)、同じく2学年上に今の菅官房長官。
更に沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さんも当時法政大に在学してたと。
当時の法政って、ヘルメット着用率が群を抜いて高かったと思うんだが…中にいたのどういうメンツだよ。
さつまもんの会=ある意味、松元ヒロの夕べ。
最後イキきった感で、締めの挨拶。
結局また「チャワンムシの歌」を皆で歌って。
次があるか、ネタが続くかはわからないけど、ヒロさんを使う/観るには一つの理由になる。
なんの与件、余見、邪推もなく、フッとこういう会があるってのが一番しっくり来るんでしょうが、そういうことでは少し引き出しにしまっておきたい会。
TEXT:凡梅@STREET-WISE