“この落語家を聴け!”林家彦いち独演会@北沢タウンホールへ
先月は立川談笑の会を観た“この落語家を聴け!”セカンドシーズン
今月は林家彦いちを。
彦いちは、同じ北沢タウンホールにて、「落語組み手」という独演会を開催している。
こちらはゲストで別の落語家が一席/彦いちが二席+トークというもの。
あとは「喋り倒し」という漫談(その域を超えつつある)の会もある。
こちらは2時間半ぐらい休憩なしで喋りまくる会。
この日はこのシリーズでは少し少な目の入りで70%ぐらい。
雨の影響などもあるだろう。
印象的には彦いち師匠の場合、のめり込んで“聴いてやるぞ!”ってファン層より、ほかの会や寄席で彦いちを観てなんか気になっており、
わりとライトに笑えて、ちょっと観とくかって層が多い。
強い固定ファンがいるには越したことないが、なんかどう言っていいかわからんが面白い、というのもオールマイティ、貴重な存在。
熱心なこの会(シリーズ)のお客さん、それと北沢で落語を聴くと決めている層で固まったというところか。
演目は
三遊亭わん丈「出来心」
林家彦いち「喋り倒し」「熱血怪談部」「長島の満月」
仲入り
インタビュー:林家彦いち/w:広瀬和生
出てくると安心する前座さん、わん丈「出来心」のあと上がって。
まず30分以上漫談、という彦いちの芸風としての「喋り倒し」
今回もたびたびマクラで差し挟む、白鳥師匠のネタ。
各地に一緒に旅行に行った先輩後輩、ゆえにボロボロ出る白鳥の面白ネタを。
中でも何度も聴いたがポナペ島事件が鉄板。
でもそれがマクラのマクラで、実はつい先ごろの新潟での落語会での(ギャラ)ギラれた事件。
これは結構なメンバーで新潟で落語会を開き、仕切った白鳥の脇の甘い、なんかボロの出る仕切りぶりを笑う。
“最後に商店街を歩いて帰るときに皆で歌ってましたから♪ギラれた人に会った~♪”
この辺はもう針を振り切る爆笑状態。
イメージが空手をやっててとか強面感もあり、こんなに笑えるのか!?と思うが、寄席で聴いてもこの人のマクラは面白い。
人間観察とそれを展開する表現、これを実行するフィルターが何層かあって、それを組み合わせて内容に合わせて強弱つけて面白くしている。
それでいて白鳥なんかのように素材で通じる面白さには、あえてノンフィルターで客席に上手く広げる見せ方だ。
「熱血怪談部」は自身の体験からの創作。
柔道部だったが、非常におとなしい監督だったゆえ、試合でも気合が入らんという経験から文化系サークルの体育会系顧問のギャップを。
従前のマクラがかなり利いている。
続けて
「長島の満月」も自身の出身地・鹿児島・出水沖の長島をモチーフに都会とのギャップで攻めて笑わかせる。最後ちょっと…
今回のインタビューは前回談笑の時よりも攻守逆転。
ここでも彦いちが喋り倒し。
まずは彦いちの創作落語の源がSF小説にあること。
筒井康隆、横田順彌、夢枕獏等々、そこから始まり→落語家への道(ほとんど無口な自分が落語なんかできるのかと心配されたと)→円丈師匠との出会い(「ぺたりこん」や「掛け算刑事」などのワールドに浸る逸話)へ。
最後は、「反対車」で座布団で如何に高く飛べるか(落語家を撮る写真家の橘蓮二さんに、この間一番高く飛んだ瞬間を撮ってもらった)→その話からエベレストでの映画撮影の取材?に行った際に5,200mの酸素の薄い中で演った「反対車」について
“ここは技じゃない、やはり最後は気持ちだ”と思って演ったと…
そして最後は、やはり白鳥ネタ。
“あの人なんでも中途半端に覚えてですよ”
“例えば“その話しは、サカバまで持ってく“”
“とかもう喋る気満々でしょ!”
落語組み手では、ゲストから“技”を吸収しつつ、それでも最後は自分のスタイルを通す。
なんとなくローテーションだったら、そこそこ計算できる3番手、4番手の投手という雰囲気だったが、そのポジションは軽く守りながら、キャラとか技とかじゃない何か別のところから席巻する雰囲気を持ってる。
まだまだ何か仕掛けてくる、気にしていなきゃいけない落語家。
それをこの会で上手く引き出されて再認識された感じだ。
TEXT:凡梅@STREET-WISE