・何者かになろうとする、その瞬間を切り取った公演。
毎夏に様々な企画を行っている春風亭ぴっかり☆。
今年の挑戦はツアーと銘打って東京で3週連続の独演会を皮切りに、大阪、名古屋、グアムと続く公演を開催。
その初日の公演(8月16日(日)、於:日比谷コンベンションホール)を観た。
・初天神 林家あんこ
・松山鏡 春風亭ぴっかり☆
・越後獅子(日舞) 春風亭ぴっかり☆
仲入り
・辰巳の辻占 春風亭ぴっかり☆
・金明竹 立川こはる
・お菊の皿 春風亭ぴっかり☆
定員207席のホールで3週連続の独演会と聞いて集客に対しても大きな挑戦を課したと感心したが、会場に着いた時には入場の長い列が作られほぼ満員の入り。
観客は年齢像も男女比も理想的な配分で、今注目されている噺家の会であることがよく分かる。
また、開演前のSEで昔の歌謡曲が流れる様も、タイトル通りに祭り感をあおり、自由な雰囲気。
前座の林家あんこは、まだ拙いながらも独自の笑いどころのふんだんな「初天神」で会場をしっかりと温めた。
お祭りとしての演出か、この前座からも自由に振舞うことの許された感覚がしっかりと機能し、全編を通じてあたたかさが感じられる公演にふさわしい幕開けとなった。
最も顕著だったのは、助演の立川こはるがロングヘアーのかつらをかぶって登場したシーン。
ボーイッシュな短髪がトレードマークのこはるのかつら姿に会場は騒然とし笑いに包まれるも、無駄なまくらはふらずに、磨き上げられて可笑しさの度合いの増した「金明竹」を披露。
しっかりと笑いをとりつつも、華麗な言い立てで滑稽なだけではなく「落語を聴いた」という満足感を感じさせた。
主役の春風亭ぴっかり☆は日舞の披露も含む3席を務めたが、夏祭りという企画ながらのネタ選択。
ツアー初日としての意気込みと、初めて彼女を観る人への自己紹介をちりばめた秀逸なまくらをふったあとの一席目「松山鏡」は非常にのんびりした雰囲気となった。
中入を挟んでは「辰巳の辻占」。人情噺的暗さや人の腹黒さまでも描かれるなど幅広いバージョンも存在するこのネタを、軽妙で滑稽な噺としてさらっと聴かせる技量は見事。身投げを思い立つ冒頭から「娑婆で…」というサゲまで、一切の無駄のない噺として生まれ変わったかのうよう。
3席目の「お菊の皿」も軽妙に聴かせながらも巧妙に聴き手を引込んだ。
とにかくすべての噺がダレ場が一切ない仕上がりで、噺の入りからサゲまでの時間の経過を忘れさせるのが大きな魅力として映った。
また、観客もタイトルに掲げられた「夏祭り」という言葉に引っ張られたのか、終始穏やかで、落語会には必ずある演者と聴く者の間の薄い壁は存在せず、非常に風通しのいい空間が生み出されていた。
演者と観衆の間でコース&レスポンスをも成立させるも、無理強いをしない一体感は心地よく、魅力ある公演として早い段階で観衆を巻き込むことに成功していた。
今春の大手芸能事務所である東宝芸能への所属という事実が自身へ刺激を与えているのか、明らかに今、何者かになろうかとする姿を垣間見られる貴重な公演となった。
この公演はツアーとして、8月23日(日)、30日(日)に東京公演、9月2日(水)に大阪公演、9月3日(木)に名古屋公演、9月12日(土)にグアム公演と続く。
テキスト:加藤孝朗(ハナシ・ドット・ジェーピー)
公演情報
ぴっかり☆夏祭り!
東京公演
日程:2015年8月16日(日)・23日(日)・30日(日) 14:00開演
会場:日比谷コンベンションホール(日比谷図書文化館地下1階)
料金:全席指定 2,500円(税込)
ゲスト:立川こはる(16日)、林家あずみ(23日)、林家なな子(30日)
前座:林家あんこ(16・23・30日)
大阪公演
日程:2015年9月2日(水) 19:00開演
会場:TORII HALL(なんばウォークB20出口より徒歩2分)
料金:全席自由 前売2,300円(税込) / 当日2,500円(税込)
ゲスト:桂 二葉
名古屋公演
日程:2015年9月3日(木)19:00開演
会場:三楽座 (名古屋駅太閤通口13番出口より徒歩5分)
料金:整理番号付き自由 2,500円(税込)
ゲスト:三遊亭日るね
公演の詳細は「予約」アイコンからリンク先画面にてご確認ください。
予約受付はカンフェティのシステムを使用しています。
ご利用には無料の会員登録が必要、ご予約後のチケットはお近くのセブンイレブンでお引き取りいただきます。
くわしくはリンク先のガイダンスをご覧ください。
春風亭ぴっかり☆落語会 in グアム
グアム公演
2015年9月12日(土) 11:30開演/13:45開演
グアム日本人学校 体育館
170 Terao Street Mangilao, Guam 96913 U.S.A. 1-671-734-8024
入場無料(要予約)
グアム公演主催:グアム日本人会・グアム日本人学校
後援:在ハガッニャ日本国総領事館
協力:グアム新聞
予約・問合せ:ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club
・主として現地にお住いの日本人のかたを対象にした、日本語での上演です。字幕や同時通訳はありません。
・グアム日本人学校 補習校授業 の一環として開催されますが、一般のかたもご入場いただけます。
・保安管理のため一般のかたのご入場は身分証明書をご提示いただく場合があります。
・満席その他の理由によりご予約のない一般のかたのご入場はお断りする場合があります。