噺家さんと協会
現在、東京・江戸落語界は、4つの協会、流派、団体に分かれています。
それは、落語協会、落語芸術協会、落語立川流(立川流)、五代目円楽一門会(円楽党)の4つです。
それぞれの成り立ちにはもちろん深い歴史と経緯がありますが、そこはここでは触れずに簡単に説明しますと、古典に重きをおく落語協会(会長:柳家小三冶、副会長:柳亭市馬)、新作にも力を入れ笑点でもお馴染のメンバーが多い落語芸術協会(会長:桂歌丸、副会長:三遊亭小遊三)、落語協会から離脱した立川談志が1983年に設立した立川流(もちろん家元は2012年に死去した立川談志)、同じく落語協会から分裂し様々な遍歴をへて現在は五代目円楽一門会を名乗る円楽党の4派に分かれています。
このサイトで紹介しているホール落語では、この4つの派を超えて様々な交流が行われており、それも私がまずはホール落語をお勧めする理由の一つなのですが、実はこの所属団体によって寄席への出演の可否が分かれるのです。
寄席と協会
実は、東京にある4カ所の寄席には、落語協会と落語芸術協会に加盟している噺家さんしか出演する事は出来ません。もっと厳密に説明しますと、浅草演芸ホール、池袋演芸場、新宿末広亭は、落語協会と落語芸術協会に加盟の噺家さんが出演します。
上野の鈴本演芸場は、落語協会に加盟の噺家さんのみ出演します。
先にあげた立川流と円楽党の噺家さんは、この4カ所の寄席には出演する事は出来ません。
立川流を立ちあげた立川談志は、寄席へ出演できないことをあまり重要視せず、ホールでおこなう落語会を中心に活動し、自ら活躍の場を広げて行き、志の輔、談春、志らく等のスターを輩出しました。
円楽党は、一時期、深川に自力で若竹という寄席を運営し活動を行っていましたが今は閉鎖され、お江戸両国亭という場所で毎月1~15日に行っている「両国寄席」という落語会を中心に、活動しています。
協会を超えた活動
落語は歴史のある伝統芸能の世界なので、所属協会によって活動の場が決まってくる等の難しい弊害があるのも事実ですが、この壁を乗り越えようという動きが噺家さんの中から出て来ました。特に春風亭小朝が中心となって2003年に協会・流派を超えた「六人の会」が結成されて大きな話題となりました。
メンバーは、春風亭小朝(落語協会)、笑福亭鶴瓶(上方落語協会)、林家正蔵(落語協会)、柳家花緑(落語協会)、春風亭昇太(落語芸術協会)、立川志の輔(立川流)。
それぞれがメディアを通して既にメジャーな存在であることから、協会や流派の垣根を越えた噺家が一同に集まる「大銀座落語祭」(2003年~2008年)や、それまで東京ではあまり触れることの出来なかった上方落語との交流を目的とした「東西落語研鑽会」等の数々のイベントのプロデュースを行い、一気に落語界が面白くなりました。
交流が盛んな現状
「六人の会」の活動以降、それに直接触発されたわけではないにせよ、協会や流派を超えた交流が盛んとなり、今、様々な組み合わせの、とても魅力的な落語会が増えている事は事実です。
寄席では限られた協会の噺家さんしか見る事が出来ませんが、ホール落語では、協会・流派はもちろんのこと、上方落語も東京で触れることが出来るようになってきました。
今、まさに、そんな素敵な落語会が百花繚乱と言っても過言ではありません。
私がこのサイトで、まずはホール落語をとおススメしているのは、この協会・流派の垣根を越えた会が増えているからに他なりません。
ちなみに上方落語界には、上方落語協会が唯一の協会として存在し、大阪唯一の定席である天満繁昌亭を運営しています。大阪は長らく寄席がなかったこともあり、協会よりも所属プロダクションの影響力が強く、吉本興業(桂文枝などが所属)、松竹芸能(笑福亭鶴瓶などが所属)、米朝事務所(桂米朝の一門が所属)が三大勢力となっています。