【レポート】2017/8/19 春風亭ぴっかり☆ 2017サマーツアー ぴっかり☆夏祭り!@日比谷コンベンションホール


・温かさで貫かれた2時間の祝祭空間

【レポート】ぴっかり☆夏祭り!2017年8月19日@日比谷コンベンションホール

様々なエンターテインメントが存在する中で、落語でしか味わえない余韻というものが存在する。本を読み終えた際の心持ちを読後感というように、落語を聴いた後にのみ感じることができる気持ちがそれだ。十分に笑った後ですっきりしていることもあれば、心に迫る噺を聴いて感じ入ることもある。落語というものはその場で消えてしまい、後には何も残らない方がいいともいわれるが、観客は皆それぞれの想いを抱きながら落語会の会場を後にする。この余韻までも支配するのが「芸」であると思わせる公演を経験してしまうと、また、自然と足は落語会へ向かうことになる。そして、またさまざまな余韻を味わうのだが、そんな余韻としてはちょっと変わった種類の心持ちを味わうことができた公演を観た。女流としてメキメキと頭角を現し始めている春風亭ぴっかり☆の一風変わった公演だ。

昨年末からの一年間を入門10周年「ぴか☆テンイヤー」と位置づけ、ジャンルを横断する幅広い活動をおこなっている春風亭ぴっかり☆。その活動の中でもメイン企画のひとつといえる、「2017サマーツアー ぴっかり☆夏祭り! ~落語と映画でランデブー~」 の東京公演(8月19日(土)、於:日比谷コンベンションホール)を観た。

【番組】
映画「耳かきランデブー」上映
中入り
手紙無筆 春風亭一花
ナースコール 春風亭ぴっかり☆
元禄女太陽伝 春風亭ぴっかり☆

春風亭ぴっかり☆は、毎年夏にはサマーツアーと銘打って日本各地のみならず海外まで回る活動をしているが、今回のサマーツアーは自身が主演した映画の上映と落語をカップリングした異色の企画で、東京・名古屋・大阪・松山・浜松・札幌の6か所を回るという精力的な活動を見せる。
いままでのツアーは各地で多彩なゲストを迎え、いかにも祭りとしての盛り上げ方だったのが、今回は生出演ゲストはなしという潔さ。映画上映があるとは言え、今回はぴっかり☆の独演会という構成で臨むという。この独演会がどのような盛り上がりを迎え、どのような余韻を与えてくれるのか、大きな期待を感じながら会場に赴いた。

会場は満員の観客で埋められており、開演前から期待感が高いのがよくわかる。客電が落ち今までのぴっかり☆の活動をダイジェストにまとめたオープンニング映像からスタート。少し前の時期のものから今へと時間の経過に合わせてまとめられた映像はダイジェストといえども成長が手に取るようにわかる。この映像後に立ちのトークで登場したぴっかり☆は、ふらっと顔を出しましたというような気負いのなさ。映画の簡単な前ふりをしつつ、映画パートとして上映がスタート。この映画「耳かきランデブー」は、吉本興業が制作し、おきなわ国際映画祭に出品されたショートムービーで、ぴっかり☆は映画初主演を務めている。

映画は、「耳かきは浮気か否か」をめぐる、ハートウォーミングなコメディ。初主演とは思えない堂々とした演技が板についている。そして、観客の質の良さに驚く。映画でのちょっとしたギャグのシーンでもしっかりと笑いが起き、グッとくるシーンでは固唾をのんで見守るというように、映画が進むにつれて客席がきっちりと引き込まれていくのがよくわかる。まるで自分の友人や子供が映画に出演していて、それを応援しているかのような、そんなあたたかな空気に包まれていくのが驚きだった。

約35分の映画上映後はそのまま中入り休憩となり、中入り後は開口一番としていとこ弟子にあたる春風亭一花が登場し、フラのある「手紙無筆」で会場を落語モードに切り替えた。

そして、満を持してしてぴっかり☆が登場。登場しただけでちょっと客席がどよめいたような気がしたが、さっき観た映画の主人公が飛び出てきたような錯覚に一瞬とらわれたかのような、そんな感覚がしたのだろう。まずは映画の感想を客席に求めつつ、映画の裏話も含めたやや長めのまくらをふりながらもバラエティに富んだ客層を前に噺が定まらずに、そのことを口にしつつ披露されたのは言わずと知れた三遊亭白鳥の新作落語「ナースコール」。新人看護師の「みどりちゃん」が夜勤の院内で繰り広げる騒動を描いたドタバタなストーリーだ。

自身の持ちネタの9割が古典であり、新作から入ることは極めてまれだという。噺に入る前に「新作を聴いていただいていいでしょうか?」と問いかけると、客席から大きな拍手が沸く。このやり取りで客席の期待がぐっと高まるのがわかる。肩の力の抜けた様が、いい意味で単なるばかばかしいだけのこの「ナースコール」という演目にマッチし、噺を盛り上げていく。観客にも構える姿勢は全く見えず、1席目にしてもう既に会場の空気が出来上がった。

「ナースコール」のあと、そのまま高座に残って今度は数日前まで出演していた舞台の話をまくらにふり始めた。これは、大地真央主演の明治座の舞台「ふるあめりかに袖はぬらさじ」で、ぴっかり☆はこの舞台に女優として出演しており、全42公演をこなしたという。ここで、舞台と落語会の客層の違いやお芝居と落語の比較を、エピソードを交えて大いに語り、ぐいぐい客席を引っ張っていく。ぴっかり☆が実際に感じた舞台と落語会の違いはそのまま観客が理解できる話が多く、観客も興味津々といったところ。

次に、お芝居が吉原の話であることから、吉原つながりでとかっちり繋いで語られたのは、師匠・春風亭小朝から習ったという、金子成人作「元禄女太陽伝」。吉原の小春を通して描かれる、大石内蔵助の息子主税(ちから)と赤穂浪士の物語。新作が2席続くという思いもよらぬ展開に会場は大いに沸きつつも、「ナースコール」に対しこちらは時代物。異例の選択にして、抜群のバランスを保っている。小春を中心に描かれるこの「元禄女太陽伝」は、しっかりと女流が演じるべき噺として独自のものに昇華されており、今のぴっかり☆には格好の噺といっていいだろう。いい意味での軽やかさが前面に出ており、師匠・小朝のバージョンに慣れた耳にも全く違和感のないどころか、「元禄女太陽伝」の新たな面を提示して見せたような好演だった。

映画と落語2席という変則的な公演ということで、正直、内容が想像できないでいたが、ふたを開けてみると最初から最後まで同じ「温かさ」という空気に包まれた、非常に稀有な公演となったと言っていいだろう。それは、映画や落語の内容からくるもののみならず、演者と客席との一体感によるところが圧倒的に大きい。演者と観客との関係性の近さといってもいいかもしれないが、その近さは、内輪のりになることのない絶妙な距離感を保っている。映画上映の際に会場を包んだ、「友人や子供が映画に出演していて、それを応援しているかのような」、そんな関係性の近さが公演を通して常に感じられ、まるで近親者を見守るような「温かさ」が終始会場内を包んでいた。

そして、二ツ目の公演ではよくある演者のお見送りも、この「温かさ」に包まれたこの日の会場には、とても意味のある行為として存在しているように思われた。

演者と観客の幸福な距離感と、その関係性が生み出す「温かさ」。それがそのまま、公演の余韻として体を包み、心も体も軽くさせ、とても和やかな気持ちで会場を後にすることができた。「落語を聴いた感」が出すぎずに、しかしながら全体としての高い満足感を与える。これは、落語と映画をカップリングした本企画の余韻としては成功したと言っていいだろう。

この公演はツアーとして東京を皮切りに、8月23日の松山、24日の名古屋、25日の大阪、26日の浜松、31日の札幌公演まで続いていく。この読後感は、落語好きにもビギナーにも、是非ともお勧めしたい。

この原稿がアップされる8月23日から、いよいよ全国公演がスタート。
23日松山。24日名古屋とも当日券あり。
25日大阪、26日浜松、31日札幌は「噺.jp」読者のための優待チケットが用意された。
詳しくは各リンク先まで。
大阪公演
https://torioki.confetti-web.com/form/249
浜松公演
https://torioki.confetti-web.com/form/250
札幌公演
https://torioki.confetti-web.com/form/251

テキスト:加藤孝朗(ハナシ・ドット・ジェーピー)


公演概要

春風亭ぴっかり☆2017サマーツアー「ぴっかり☆夏祭り!」~落語と映画でランデブー~

夏だ、ツアーだ、ぴっかり☆らくご!
今年は映画とランデブー!
ぴっかり☆のさわやか落語をたっぷりと!
初主演映画「耳かきランデブー」も上映!

◆落語実演
出演:春風亭ぴっかり☆
開口一番:春風亭一花(東京公演のみ)

◆映画上映
「耳かきランデブー」(第9回沖縄国際映画祭 招待作品)
監督・脚本:ふくだみゆき
出演:春風亭ぴっかり☆、山本博(ロバート)、村上純(しずる)、二宮芽生ほか
上映時間:32分

【松山公演】
日程:2017年8月23日(水) 18:30開場 19:00開演
会場:松山キティホール(伊予鉄道「石手川公園」駅下車 徒歩4分)
料金:前売2,200円 当日2,500円(全席自由・税込/ドリンク代別)
前売開始:2017年7月1日(土)
チケット取扱:
ぴっかり☆倶楽部
チケットぴあ(Pコード 480-510)0570-02-9999
カンフェティチケットセンター 0120-240-540(平日10:00~18:00)
キティホール店頭(12:00~21:00)089-945-0020
・入場時にドリンク代(500円~)を別途いただきます。
・当日はご到着順にご入場いただきます。混雑が見込まれる際は、前売券をお持ちのお客様を優先してご入場いただく場合があります。
・前売完売の場合、当日券は発売されないことがあります。
◆提携 松山キティホール
◆問合せ ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club/松山キティホール 089-945-0020

【名古屋公演】
日程:2017年8月24日(木) 18:30開場 19:00開演
会場:大須演芸場(市営地下鉄鶴舞線「大須観音」駅2番出口3分)
料金:指定席(一階席)2,500円(税込) 自由席(二階桟敷席・当日券のみ)2,500円(税込)
前売開始:2017年7月8日(土)
チケット取扱:
キョードー東海 052-972-7466
キョードー東海TICKETS ONLINE
プレリザーブ 6/24~6/28
チケットぴあ(Pコード:480-254) 0570-02-9999
プレリザーブ 6/24~6/28
ローソンチケット(Lコード:41779) 0570-084-004
プレリク先行(先着受付) 6/28~7/5
CNプレイガイド 0570-08-9999
先行予約(先着受付) 6/24~7/4
e+(イープラス) ※パソコン・携帯共通
先行予約(先着受付) 6/29~7/6
セブンチケット(セブンイレブン店内マルチコピー機)
・会場窓口での前売券のお取扱いはございません。
◆主催 キョードー東海
◆問合せ キョードー東海 052-972-7466 月~土10:00~19:00(日・祝休)

【大阪公演】
日程:2017年8月25日(金) 18:30開場 19:00開演
会場:あべのハルカスSPACE9(あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階)
料金:2,500円 (整理番号つき全席自由・税込)
ハナシ・ドット・ジェーピー読者割引 https://torioki.confetti-web.com/form/249
◆協力 近鉄アート館
◆問合せ ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club/近鉄アート館 06-6622-8802

【浜松公演】
日程:2017年8月26日(土) 12:30開場 13:00開演
会場:POPS倶楽部(JR浜松駅北口から北へ徒歩4分、遠鉄第一通り駅から南へ徒歩1分)
料金:前売2,200円 当日2,500円(全席自由・税込/ドリンク代別)
ハナシ・ドット・ジェーピー読者割引 https://torioki.confetti-web.com/form/250
◆協力 東海落語往来
◆問合せ ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club/POPS倶楽部 053-525-7383

【札幌公演】
日程:2017年8月31日(木) 18:30開場 19:00開演
会場:シネマカフェ(中央区南2条西2丁目 富樫ビルB1 ダイソー南側入口)
料金:前売2,200円 当日2,500円(全席自由・税込/ドリンク代別)
ハナシ・ドット・ジェーピー読者割引 https://torioki.confetti-web.com/form/251
◆問合せ ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club/シネマカフェ 011-271-0705

春風亭ぴっかり☆映画初主演!
耳かきって“浮気”なの!?
胸キュン・ラブコメディ完成♡

第9回沖縄国際映画祭 招待作品
2016年度FOX短編映画祭グランプリ!各映画祭13冠!
「こんぷれっくす×コンプレックス」ふくだみゆき監督 最新作

耳かきが趣味の樺沢さやか(春風亭ぴっかり☆)は、週に一度、彼氏の須田啓太(ロバート山本博)の耳かきをすることが習慣。
道具を選んだりしながら楽しんでいた耳かきも、最近はマンネリ化していた。
そんなとき、同僚の小林(しずる村上純)が、自分で耳かきをするのが苦手だと知って、さやかは小林の耳かきをしてあげることに。
仕事の合間に耳かきを重ねる二人、遂には…!?

オフィシャルサイト

© 映画「耳かきランデブー」製作委員会

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・ご予約先、ご予約方法に応じ、各種手数料が発生する場合があります。
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プロデュース:熊田幸弘
舞台監修:杉村向陽(マルス・エイ・ソル)
宣伝デザイン:市川明莉
デザイン監修:谷内康宣

企画制作:ぴっかり☆らくご制作委員会
後援:東宝芸能株式会社