【レポート】2016/4/6 “冗談いっちゃいけねぇ Part5”柳家喜多八/桃月庵白酒@牛込箪笥ホール


“冗談いっちゃいけねぇ Part5”柳家喜多八/桃月庵白酒@牛込箪笥ホールへ

夕方、旧い知り合いにほぼ偶々会って、“久々だね、ちょい”と銀座駅のエキナカでパッと飲んでたら、なんの拍子か話しが盛り上がって行くことに。
まあ自分のアタマの片隅には、この会とさん喬独演会@日本橋劇場があって、どうしようかな…と。
誰か(あんまり知らん奴)と一緒に行くならこっちの方がいいか、というとこで。
(さん喬独演会は「たちきり」「鰍沢」+ほか1席だったらしいが)

ちょうどこの日の明け方、眠れずにこの間の日曜朝のマニー・パッキャオVSティモシー・ブラッドリー戦を録画で観てたのもあり、
その中で往年のチャンプ、ロベルト・デュランがリングサイドで観戦していたところを抜かれたのを観て“喜多八さんを思い出した”のもある。
喜多八さんは端正?飄々?病弱?に見えて、特に後輩との二人会がそうだが、基本は“負けねぇよ”的なファイティングスタイル。
“なんで落語を交互に演るだけなのにそうなの?”とか訊かれても、なんか実際そんな感じとしか答えようがない。
しかしあきらかにそう。
これが数多ある落語会の中で浮き上がって覚えてて、なんか“この雰囲気だぜ!”と渇望するときがある。
今回もそうだった。

去年@月島で観たかな?恐らく3回目ぐらい。
会場は60-70%の入り

演目は、
桃月庵はまぐり「真田小僧」
桃月庵白酒「花色木綿」
柳家喜多八「棒鱈」
仲入り
柳家喜多八「唖の釣り」
桃月庵白酒「今戸の狐」

ちょっと余所に行くことが多かったか、久々に白酒の会でのはまぐりくん。
わりと聴く機会多めの「真田小僧」
スロースタート気味なんで、後半に巻く。
それでも坊やの可笑しさでわりと笑いを取ってもたす。

一旦緞帳が下りる。
脚がお悪いのでいつも板付き(あらかじめ高座に上がってる)登場の喜多八さんかと思いきや、出囃子は白酒の「江戸」
あれ?なんか“めくり”を返す、はまぐりも??だったが、上がって白酒。
“板付きというやつで、なんかいつも喜多八兄貴だけやってると偉そうだから…”
笑わせて
本当は出番はひっくり返ってたらしいが、直前で差し入れのフィナンシェ(菓子)か何かに夢中になった喜多八さんから“先、頼む”と言われたとか、
マクラは4月→新生活→5月にはもう辞める奴→夢を追いかける等々いつものループから、歳食ってから“俺のやりたいのはこれだ!”と何を勘違いしたか入門してくる奴の話しから、何の加減か議員の話し、そこから「花色木綿」
まったく取られるもんがない貧乏長屋だが、間抜けな泥棒が入ったことをいいことに家賃を取られたと言って大家をごまかそうとする。
大家の事情聴取に布団やら、蚊帳やら、着物やらなんでも裏が”花色木綿で”と。
”寒さにトラウマでもあんのか”って、ボソッとぼやく大家が白酒っぽく。
三三でわりと聴いたが、三三のが天然のアホさで、白酒のはどっちか言うと確信犯的。

再び緞帳が下りて、板付きで喜多八さん。
会場を”ちょっと大きいなぁ…”と、”もっと小さくして、お客さんの逃げられないとこで…”
から白酒のマクラにかけてか、酒を呑まなくなって甘いものを良く食べる話し。
”昔から言ってるけど別に冬に冷やし中華があっていい、それと同じように早く水ようかんが食べたいんですな…”から「棒鱈」へ。
病気してやや身体が小さくはなった。
ミドル級まではいかない、ウェルター級、ジュニアウェルター級ぐらいのイメージだったが自然減量でバンタム級とフライ級の間ぐらいイメージ。
まあ白酒はミドル級→ライトヘビー級からクルーザー級ぐらいの感じだが、そこへ挑む。
だから圧よりも技、しかもグサッと。
薩摩(白酒の出身)の田舎侍に喧嘩を吹っかける噺にて。
まあこの薩摩の侍の酔い方の始末に負えないこと…最近酒を飲んでないということで声も大分響くのか、噺に嵌りこんで笑う。
ジョー小泉風に言えば、前半
”白酒も途中、わざわざ談志さんの真似とか小技を入れてきましたが、筋とキャラで正面から笑わせてくれて喜多八さん。10対9!”
そんな感じ。

喜多八さん二席目。
わりと多いかな?こういう場合の1席目の反省から
”少し上下(カミシモ)間違えましてね…わかんなかったでしょ?それが芸です!”
食えないなぁ、まったく。
そこから板付きなのもあるのか、正座のさいに”あいびき”(正座する際に足と尻の間に入れるもの)を使ってると。
”金属製だ、木製だ色々ありますがね…自分は”とトイレットペーパーをおもむろに。
ひとしきり”あいびき”に合うトイレットペーパー談義。
”なるべく安い方がいいんだよ、堅くてね”
”今度、うちの師匠にも教えてやろう”
そこから「唖の釣り」
天然ボケの与太郎もいいんですが、いつも好きなのは”ご同役、ゆめゆめ油断召されるな”という同心。
なんか喜多八さんと言えば、役人侍のなんとも言えない感じが好きだ。
クライマックス、与太郎はなんか上手く逃げて、七兵衛さんが舌が攣ったところ、怪しい手話風の手振りがなんとも言えずに爆笑。

トリは白酒にて上がって、前の一席を
”あれは唖(おし)じゃなくて、チューバッカですね…”
まあそうですね。
昔は”寄席なんか行っちゃダメ!なに吹き込まれるかわからないから!”だったが、最近はむしろ古典芸能鑑賞などと称して歓迎される。
その反対なのはスポーツ界…
野球賭博だ、闇カジノだと振って、楽屋のギャンブルルールを自分を妙な安全地帯に置きながら解説しつつ、からの「今戸の狐」
湯島はじめ何回か聴いてるが、ほぼ白酒で聴いてるんじゃないか?
最後の勘違いとズレの会話の可笑しさを笑うもんだが、結構噺の前半の仕込が濃い。
そこを70-80%ぐらいでも理解しないと最後に”ゲラゲラ”とまでは笑えない。
それでもアンジャッシュのコントのようなズレの妙味にはなる。
結構、お洒落で噺自体好きですが、演る方も客を選ぶだろうし、聴く方も篩にかけられる感じで難敵な噺。
この日は会場全体でわりと盛り上がった方。
なにせ”これがその狐です”と奥から絵付け中の狐を出す良助の、ビクつきながら応じてしまう手つきが笑わかす。

白酒の二人会巧者ぶりが活き、喜多八さんも自分のスタイルを貫ながらも上手く後輩には甘え、客もそのバランスを楽しめる。
好ファイト。
というか、これは寄席ではない落語会、特に二人会の良さ。
三位一体、客も入れての落語のもたらす目に見えない三方一両得。

TEXT:凡梅@STREET-WISE