【スペシャルインタビュー】春風亭ぴっかり☆ 「高座は、私が生きている存在の証明」


――前回、入門に際して師匠から「落語は女には無理だ」と言われたという話を伺ったのですが、そういうことを言う方も多いじゃないですか。その時には、ご自身もそう思ってらっしゃったと言われていました。その気持ちに何か変化はありますか。

変わらないですね。やはり、「本来は無理なんだろうな」っていう気持ちはありますし、師匠にもそれは言われていて、多分それは一生私の中では変わらないような気がするんですよね。
ただ、師匠によく言われるのは、君が古典やっても男がやっている方がいいに決まってるんだから、君はそうじゃないことをやらないと抜きん出られない。そんなもの、寄席にぴっかり☆を入れようというふうになるはずがないんだから、それを超えるものを君は持ちなさい、と。男を聞いた方がいいに決まっているんだからって、必ずそういう言い方をするんですよ。
なので、やっぱり、それは私の中で、師匠の考えというのもあるかもしれませんけど、そういうものだと思っているので、そこを超える、ぴっかり☆だからいいよね、という何か私の魅力は絶対作らなきゃいけないなって思っています。

――今のところ、今言われたぴっかり☆だからいいよね、という部分で、現状、そうだと言えるものはありますか。

無いですね。無いっていうか、うーん、これは難しいんですけど、そういうものを持てている自信は無いですね。

――ただ、少なからず何かがあるからこそ、現状のいろんなところからの引き立てがあるってことだと思うんです。

漠然とした、「私はやれる」みたいな、すごい漠然とした自信だけで支えられていて、細かい自信は無いです。
この漠然とした自信が無くなったときは、私は多分無理ですね、噺家として。というか表に出られないですね。やっぱり、いればいるほど、この世界の人たち、さっきもバケモンって言いましたけど、力がわかってきちゃったんで、「私、なんてところに来ちゃったんだ」みたいな感じもあるんで。やっぱり。

――知ってしまったからこその怖さというか。

怖いです。普通に面白い話をしゃべれば誰だって面白いんじゃないかと、お客さんの時はそう思ってたところもあります。でも、本当にプロの真打の技量はすごいんだって、客席で見たときの比じゃないくらいの発見が内側にはいっぱいあるんで、そういう意味では、まだ全然自信は持ててないですね。

――漠然とした自信、それが何なのかはわからないけど、それがあるから今のバランスが成立しているという。

そうです。

――その漠然とした自信というのは、もしかしたら言葉にはできないかもしれない、ぴっかり☆さんからはこれだって言えないかもしれないけれども、お客さんからすると、これがぴっかり☆さんの独自のやつだよね、ってそれぞれが受け取っているものがあるのかもしれないですね。それがまだ、10人が10人これだと言えるものではないから、漠然としたものとしてご本人にもはっきりと見えてないということかもしれないですね。

なるほど、そうかもしれないです。

――それがやっぱり、10人の内2~3人が共通の意見を持ち始めてきてっていう風になると、少しずつ実感として感じてくるのかもしれないですね。

何かしらそれがあるから、お客さんたちは来てくれていると思うので、何かはきっと持って帰ってもらってるんだろうっていう、ここの自信だけですね。
そう信じたいし、それが無きゃやっぱり、お客さんがゼロになるだけですから。来てもらっている段階では、そう思うしかないです。でもわかんないなぁ、本当に怖いです。

――怖さもあるけれども、いろんな過酷な状況も含めて、日々高座に向かうっていうモチベーションはどこから来るんでしょうか。

(無言)
……えー、どこから来てるんだろう、これ……。お客さんを楽しませたいというレベルのもんじゃないというか、前提にはあるんですけど。……何だろう、……えー、……何だろう…。すごい困っちゃった………。何でだろう。

――何でだか分からないけれども、そこには躊躇なく高座にあがるご自身がいるわけですよね。

確かに、これをやめるという選択は、絶対にないんです。何で?って言われたら。これが私の生きかただから。何だろう、大げさですけど、そういう感じですかね。私が生きている存在の証明が高座に上がることなので、もう、それに向かってやっているだけで。だから、これがなくなるってことは考えたことがないんです。高座にあがる自分しか考えてないから。

――高座に上がることが、今まさに自分のアイデンティティにつながるものなのかもしれないですね。今、非常に印象的だったのは、モチベーションは何でしょうかという時に、真剣に「何だろう」と言われたことです。そのモチベーションが分からないってことが、僕にとって非常にリアルだったんです。そのモチベーションはこういうことなんですよ、って逆にすらすら言葉にされてしまっても、聞いときながらちょっと困っちゃうところも。

すらすら言えるのはすごいですけどね(笑)。

――今話をしてきた、小朝師匠が真打になるところまで長いスパンでものを見られている方であるとか、そういう環境に囲まれている中で、非常に長い期間ですべてが動いているという中心にいる方だという印象があります。そういう方だからこそ、日々高座に向かうモチベーションは何でしょうというときに、そこではたと、何なんだろう?という非常に素直なリアクションが出たところが印象的だったし、納得いったというか腑に落ちたところがあったんです。もしかしたら、その答えは、真打になってとか、もしくは、師匠に並ぶような、超えるような、新たなトライというものが打ち出せてやり遂げた時とかに、答えとして明確になって出てくるのかもしれないですね。自分はなぜ高座にあがるのかが。

言葉として、何かあるかもしれないですね。そうなっていたい気もしますし、そうなりたいと思います。

――その言葉を聞ける日を楽しみにして、今後も追っかけさせていただきたいと思っております。
最後に、夏祭りの見どころ・聞き所・押しどころをもれなくぬかりなくお伺いさせてください。

まず、4月にあった「ぴっかり☆春一番!」というイベントからの続き物という感覚で私はやっておりまして、全部毎回ネタは変えます。なので、全部来てもらって楽しめるという。

――要は、全部来いと(笑)。

そうですね。そういうことですね(笑)。来ちゃっていいよってことですね(笑)。
それと、大阪・名古屋は、東京での演目のなかからお客様の反響がよかったものを持っていこうと思っています。いまの時点でのベストといいますか、東京の公演を踏まえた私を持って行けるようにという考えがあるので、そこが見どころですかね。とくに名古屋は初めての開催なので、大阪公演を最初にやったときと同じ気持ちで「チャレンジ」ですね。

――この「ぴっかり☆夏祭り」という祭りのファイナルである、グアム公演については。

あのー、グアムに行きたいな、みたいな(爆笑)。
とにかく、いろんなことをやりたいんですよ、無謀にも。毎年、何かいつもと違うことをプラスしていきたいなっていうことの答えが今年はこれだったという。一昨年、一之輔兄さんと海外公演に行かせていただいたからこそのアイデアでもあります。現地のかたには、普段あまり見る機会のないナマの演芸をたっぷり楽しんでいただけたらなって思います。

――夏の祭りが終わって、じゃぁまた来年の夏は何をやるかってことを、いろいろ考えていくんですね。今やっていないことを。

そう。少しずつハードルを高くして。

――そうやって、ステップバイステップの活動があるからこそ、日々楽しめているのかもしれないですね。

そうですね。1年周期で、夏に向けてっていうような感覚は、なんとなく3年で持ってきたので。

祭が終わったら、2席ネタおろしと並行して、おさらいの会というのをはじめようと思っています。詳細はまだ何も決まっていないんですけど。ネタおろしをして、定期的な会をやっているうえで、そのネタおろししたもののクオリティを上げるっていう場所が少ない。そういう意味では、できるだけお客様が来やすいような時間帯で、私も他のお仕事に響かないところで、おさらいを中心に、何をやるのかわからない、3席同じネタをやっちゃうよってときもあるかもしれないし、それくらい、「おさらい」っていうのを思いっきり打ち立てた会をやろうと思っています。

――面白そうですね。

お客さんは、根気強い方じゃないと来られないかもしれませんけどね(笑)。

――ネタおろしの会があって、日々の会があって、おさらいの会があって…。そうやって、日々の噺家・落語家としての進化というのをすべて包み隠さず、見せて前に進んでいくというのが、本来のあるべき姿でもありますもんね。そういうものを全て見せて、どこまでたどり着けるのか、というのを楽しみにしてもらいながら、まずは「夏祭り!」と。

そうですね。「夏祭り!」、にぎやかに参加していただきたいです。

――お祭り感ということで、ファイナル、グアムというのはいいですよね。

自分祭りみたいなね(笑)

――そういうところでも、楽しさは伝わってきます。頑張ってください。

ありがとうございました。


公演情報

ぴっかり☆夏祭り!

 

東京公演
日程:2015年8月16日(日)・23日(日)・30日(日) 14:00開演
会場:日比谷コンベンションホール(日比谷図書文化館地下1階)
料金:全席指定 2,500円(税込)
ゲスト:立川こはる(16日)、林家あずみ(23日)、林家なな子(30日)
前座:林家あんこ(16・23・30日)

 

大阪公演
日程:2015年9月2日(水) 19:00開演
会場:TORII HALL(なんばウォークB20出口より徒歩2分)
料金:全席自由 前売2,300円(税込) / 当日2,500円(税込)
ゲスト:桂 二葉

 

名古屋公演
日程:2015年9月3日(木)19:00開演
会場:三楽座 (名古屋駅太閤通口13番出口より徒歩5分)
料金:整理番号付き自由 2,500円(税込)
ゲスト:三遊亭日るね

 

公演の詳細は「予約」アイコンからリンク先画面にてご確認ください。
予約受付はカンフェティのシステムを使用しています。
ご利用には無料の会員登録が必要、ご予約後のチケットはお近くのセブンイレブンでお引き取りいただきます。
くわしくはリンク先のガイダンスをご覧ください。

 

春風亭ぴっかり☆落語会 in グアム

グアム公演

2015年9月12日(土) 11:30開演/13:45開演
グアム日本人学校 体育館
170 Terao Street Mangilao, Guam 96913 U.S.A. 1-671-734-8024

入場無料(要予約)

グアム公演主催:グアム日本人会・グアム日本人学校
後援:在ハガッニャ日本国総領事館
協力:グアム新聞

予約・問合せ:ぴっかり☆らくご制作委員会 info@pikkari.club
・主として現地にお住いの日本人のかたを対象にした、日本語での上演です。字幕や同時通訳はありません。
・グアム日本人学校 補習校授業 の一環として開催されますが、一般のかたもご入場いただけます。
・保安管理のため一般のかたのご入場は身分証明書をご提示いただく場合があります。
・満席その他の理由によりご予約のない一般のかたのご入場はお断りする場合があります。

 

詳細は、春風亭ぴっかり☆オフィシャルサイト「ぴっかり☆倶楽部」でご確認ください。


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