【鑑賞レポート】2015年4月12日 よみうりホール「よってたかってもりもり ”有楽町スペシャル15春/夜(柳亭市馬/柳家三三/三遊亭兼好/春風亭一之輔)」


“よってたかってもりもり”有楽町スペシャル15春/夜(柳亭市馬/柳家三三/三遊亭兼好/春風亭一之輔)@よみうりホールへ

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四半期に1回ぐらいの割合で開催される派手目な寄席、みたいなもん。

今回は昼は新作系(柳家喬太郎/三遊亭白鳥/立川談笑/春風亭百栄)で、どっちか言うと気分的には、こっちの新作の方に行きたかったが、前夜町内の寄合で飲み過ぎてどうにも動けず…
まあそんな江戸前な理由で夜の部へ。

さすがに1,000以上のキャパのよみうりホール。十分当日券で入れます。
大体いつも同じような、これに白酒と鯉昇が加わるようなメンツで回してます。

「落語」のショーケースというか、軽い見本市のような雰囲気(勿論これがすべてじゃないが)で、初めて聴く人や休みの日“なんとなくお笑いでも”ぐらいの人が多い。1回で4人出てくるので、色々観れてお得というのもあるでしょう。

演目は

林家なな子「転失気」
柳亭市馬「雑俳」
三遊亭兼好「お見立て」
仲入り
春風亭一之輔「茶の湯」
柳家三三「宿屋の仇討」

逆に言うと4人も出ると、皆軽い噺で終わるみたいなこともあるのですが…

まずは開口一番でなな子が出てきて。
湯島なんかでよく観たが、大きなハコゆえ少しクサく派手目に。
見習いの小坊主・珍念が可愛い。
偉そうに“ちょっと上手くなったんじゃね”と思ったが、続いて浅めの香盤で珍しく市馬さん。

“なな子も来月には、いよいよ二つ目になります。もう指折りその日までを数えてね”
なるほどそうか。

“昼の部からお越しのお客様には、まあ昼は”化け物大会“みたいなもんでね”からの「雑俳」
ああ、やっぱり軽い噺で流すかぁと思いつつ、まあ最初に上がるなんてことはあんまりないから「雑俳」演りたいってもあるでしょう。
そうこうしてるうちに途中で噺を間違えて、“大坊主小坊主”のところ“(下駄の)一文字一文字”と。
“??”と思ってたら、自らこの間違えを可愛げに転じて笑いに。

冷や汗は出たろうが、逆に言えば一気に客席を温める。

それを上手く繋いで展開したのが次に上がった兼好さん。

新年度の生活にまだまだ馴染まない人もいるでしょう→なんでも残業代がなくなる人がいる→噺家は同じギャラならなるべく喋る(労働)時間を短くする、といつもながら軽快にマクラを展開。
“まだから市馬師匠も久々に早めに上がって”ああ何演ろうかな“とか言って喜んでたら、ふふあのザマで”、“まあまあ人間国宝の小三治師匠とかさん喬師匠が長く演るのは何も残業代が欲しくてやってるわけじゃないんです”

この人の二番打者的な寄席での繋ぎと展開は、ホントに一級品だ。

そのあとまた“あとあれね、なんとかハラスメントなんてね、我々の世界はパワハラで出来てますから”
“さっきのなな子さんなんかも夜の部ならいいけど、昼の部なら、もすぐお尻触られたりね。セクハラで”
“他にも妊娠した”マタハラ“とか、モラハラとか、巨人に苛められたキヨハラとか”
“あ!ここよみうりホールか!”
計算されたマクラ。

前の一席を受けて開いて「お見立て」
喜瀬川花魁と杢兵衛大尽の間を喜助が行ったり来たりを省力化しつつ、巻き込まれ型で、わりとモンティ・パイソンっぽい。もちろん爆笑で。

一之輔は上がって“あたし兼好師匠が上がってるとき楽屋に入ったんですがね、なんか市馬師匠が泣いてたんですが、なんかあったんすか?”
もちろん冗談だが、またこれで掴む。
マクラは、先週木曜にも@国立でも聴いた近所の失踪オカメインコの張り紙についての詳細版からの「茶の湯」。
高座で聴くのは久々。

根岸の里の侘び住まい、隠居とお気に入りの小僧・定吉の茶の湯が、段々カルト・エスカレートする様は常識を超えた面白さ。
ちょっと考えたら、噺としては別に笑える状態じゃなくなってるんだが、逆に笑い増しになってるのは、彼の「粗忽の釘」「堀之内」とならんで妄想と空想が世界を凌駕する一之輔ワールドの真骨頂でしょう。

トリは三三。

上がって、“今、楽屋で市馬師匠と一之輔君の「茶の湯」を聴いてたら、市馬師匠から…”
“「三三」「はい!」「この噺、俺が稽古したんだよ。跡形もねぇな」”

降りてまだ袖にいた一之輔を見やり、“まったく反省しない奴だなぁ”から「宿屋の仇討」。

これも久々。
この噺、わりとストーリーと語りでプッシュ型で語るのが多いと思うが、三三のはプル型というか奥行を造るような雰囲気になる。
侍・万事世話九郎の視点が、そうさせるのかな?
1,000人以上のキャパだとどうしても、一度は携帯が鳴る。
この日はここまでなかったが、サゲ間近に侍の命で宿屋の連中が三人組を朝まで縛っていたくだりのところで鳴る。

侍はとぼけて“あの者たちはどうしたじゃ?”
“あなた様が、仇と言われたので…”からそれがぐっすり寝るためだと薄々わかったタイミングで噺に上手く混ぜて“電話なんか出てる場合じゃないでしょ!”

寄席のようなつなぎ、加えて四者四様の面白さ。

日曜の午後・夕方から夜、フワッと過ごすにはもってこいで、新作を観たかったが最後はそんなことすっかり忘れて楽しんだ。
寄席は花やしきや動物園だが、こういう会は、それが時折、豊島園や、ひらパー、USJになる。

TEXT:凡梅@STREET-WISE

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